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Schooで“視野を広げる”学びを━━山梨県庁が取り組む、職員の「人生」を豊かにする人財育成とは?

2024年6月より、約3800人の全職員を対象にオンライン動画学習サービス「Schoo for Business」を導入した山梨県庁。「創意工夫と高い生産性、前向きな姿勢で組織に貢献する職員像を実現する」目的とともに、組織を超えた職員一人ひとりの人生にも寄り添った取り組みだといいます。

山梨県庁が目指す人材育成の形とは、どういったものなのでしょうか。2023年7月に総務省から県総務部長に就任した関口龍海さん、2022年に入庁し職員研修を担当する小林未歩さんに、導入の背景や現在の状況を伺いました。

*プロフィール(写真左から)
関口龍海さん

2006年総務省に入省。2023年7月、総務省より山梨県庁に出向し、総務部長を務める。国家公務員の傍ら僧侶としても活動中。

小林未歩さん
2022年入庁。2年の福祉保健総務課勤務を経て、2024年4月より職員研修所へ異動。庁内のSchoo利用促進に邁進中。


公務員がやりがいをもって働き、豊かに生きていくために

━━ 関口さんは2023年に総務省より山梨県庁に出向。総務部長として庁内の組織風土改革に尽力されています。どのような点に注力されているのでしょうか?

関口龍海さん(以下、関口):
どの自治体もそうですが、行政の業務は非常に多岐にわたり職員は非常に多忙です。私が山梨県庁の人事当局を代表する立場になった今、これまで感じてきたもどかしい気持ちや当時の目線、感覚を振り返りながら、職員が働く環境を改善していきたいと思って組織風土の改革に注力をしています。
私は長く国家公務員としてやりがいを持って働いてきましたが、時には何かと批判される立場にあり、苦しいことも多かったです。人間はやはり誰かに認められたり支えられたりしながら、やりたい仕事ができているという実感が一番大事だと思います。

県庁という組織においても、職員一人ひとりが今の立場で仕事や成果を認められ、やりがいや生きがいを感じることができれば、どんな仕事でも最高のパフォーマンスを発揮してくれるんじゃないかと思っています。

禅僧・道元の言葉に「遍界不曾蔵(へんかい かつてかくさず)」というものがあります。

私たちは自分の知らない知識や経験を求めて日々あくせくしているけれど、真実は足元にある。目に見える世界が全てであり、身近なところにこそ自分が立ち向かうべき課題があるのだ、ということを示唆する言葉です。

私も子育て中ですが、子どもとの体験や普段の生活、またもう一つの仕事である僧侶として様々な苦しみを抱える人たちのお話を聞く中に、自分が立ち向かうべき行政の課題がある気がしています。
そのため、職場での仕事はもちろん、それ以外でも社会に関心を向ける機会を持つ必要があると常々感じています。

━━ well-beingを掲げる企業が増えてきた昨今ですが、公務員においてもwell-beingを求めるような職場環境の変化があるのでしょうか?

関口:あると思います。例えば職員研修もかつては実務的な行政研修をすれば事足りていましたが、近年は途中で離職される方も多くなりました。給与は民間企業と比較しても決して高くなく、公務員の志望者数は年々減少傾向です。

職員の中には、求められる課題に対して一生懸命取り組むあまり、自分の生活や家庭を犠牲にしてしまっている人もいます。その結果、職場で優秀でも、退職後に地域での人間関係がうまくいかず孤立してしまうことも。だからもっと職場以外での地域活動や、地域産業に貢献する活動をしてほしいし、その場合は正当な報酬を得てほしい。公務員の処遇について、根本的に考え直すべきタイミングにきており、山梨県は職員の副業規制について見直していく方向です。

━━ 組織内の人財育成にとどまらず、働き方や生き方にも関わることなのですね。これまでさまざまな自治体に在籍したご経験をお持ちですが、全国の地方自治体が抱える人材育成の課題は何だと思いますか?

関口:この狭い建物、狭い組織の中だけでなく、社会の中で自分らしい生き方や、他者のために生きることを、これからの県庁職員には選んでいってほしいなと思っています。

個人的な見解ですが、人口減少、人材不足が顕著になるこれからの時代、自治体それぞれが自前でフルスペックの行政をやる必要はないと思っています。行政サービスも近隣の自治体と共有できるように枠を広げて、処理をしていく方法を考えていくべきです。

人口減少、人材不足が進むこれからは、自治体の枠組みを超えて地域の課題に共に立ち向かうことが、結果的には人材育成の課題を解決することになるのではないでしょうか。


多忙な公務員の実情にフィット。視野を広げるためにSchooを活用

━━ 2024年6月より山梨県庁では2つのオンライン学習サービスが導入されました。人財育成の施策に「学習」を取り入れたその背景には、どのような課題や危機感があったのでしょうか?

関口:一言で言うと「職員たちの余裕のなさ」に尽きます。ここ15年ほど職員の採用数を抑えてきたため職員は増えず、一方で行政の仕事は全く減っていません。職員は常に仕事に追われ、疲弊しています。業務のDX化を進めようにも内部に専門家がおらず、取り組めていないのが現状。これは小規模自治体ほど顕著です。

したがって、職員たちに余裕のある環境で学習や研修の機会を与えることができなくなっています。優秀で頑張っている人ほど忙しく、研修に参加する時間も余裕もありません。実際、参加率は低迷しています。

━━ 導入したオンライン学習の1つ「Schoo」は、どこに魅力を感じますか?

関口:8,500本と幅広い多様なコンテンツがあり、興味関心の分野をいつでもどこでも学べるところがいいですよね。いつでもどこでも視聴できる点は、忙しい今の公務員の実情にあったサービスですね。デザインも興味深く一度開くと、ついでにあれもこれもと見たくなるような魅力的なコンテンツが充実しています。

私はYouTubeを10分も見れない性分ですが、それでもちょっとずつ、早送りしながらでも一通り見ることができるので勉強しやすさを実感しています。

実務に役立てるだけじゃなく、仕事や社会に対しての視野を広げる機会としてSchooを活用することが非常に大事だと思っています。

━━ 導入から2カ月が経ちますが、受講者からどのような反応や感想がありましたか?

小林未歩さん(以下、小林):アンケートで一番多かったのが「隙間時間を有効活用できた」という意見でした。実は多くの方が自己啓発に取り組みたい気持ちを持っていたようで、「Schooが自己啓発に取り組むきっかけになった」「学習内容が面白かった」と好評をいただいています。

職員研修所としての一番の狙いは「楽しんで学んでもらうこと」。自己啓発や自律的な学びでは、楽しんで学べることが重要な要素だと考えてSchooを導入したので、狙いどおりの反応があったようで良かったです。

━━ 小林さんご自身は受講しましたか?

小林:
実は以前から個人的にSchooを使っていました。ショートカットキーや資料作成、AIやNotion等の新たなツールに関する授業を見て、すぐに業務内で活用できた経験があります。学んで、実践して、という良いサイクルができているので、他の受講者の方にもそんな好循環が生まれたらいいなと思っています。
“業務に必要なスキルを得る”という目的も一つありますが、県職員は社会の変化に対応し、様々なステークホルダーの方々と信頼関係を築いていく必要があります。そのためにも、自らを律して学び続ける習慣を身につけたり、固定概念や既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想や感性を吸収して、地域住民のひとりとしての人間性を高めることが大切だと考えています。

【小林さんのおすすめ授業】


━━ 山梨県庁ではどのような授業がよく見られていますか?また、受講者はどのような時間帯に視聴しているのでしょうか?

小林:WordやExcel操作など資料作成に役立つコンテンツや、仕事効率化の授業が常に上位に上がってきます。多くの職員が担当業務で忙しく、仕事を効率良く進めて少しでも時間を有効活用したいという意識が垣間見れる結果となりました。
その他にも、経済の知識や健康についてなど、仕事に限らず生活に役立つコンテンツまで幅広く視聴されていて、少しずつ学びの“裾野”が広がりつつあると感じています。

Schooは自主的・自律的な学びなので、業務時間内より通勤時間やお食事の途中に“ながら見”をしている方が多いようですね。特に家庭をお持ちの方はちょっとした隙間時間を活用して、工夫しながら学んでいらっしゃるようです。

━━ Schooの利用促進に向けて、どのような施策に取り組みましたか?

小林:8,500本以上も授業があると、どれを見ようかと皆さん結構悩んでしまうようです。そこで人気授業やおすすめの授業を発信したところ、手始めにそこから見てくださる方も増えてきました。

嬉しかったのは、これまでSchooにも自己啓発にも興味がなかった方にも、研修所からおすすめとして発信した授業が刺さったようで、「ぜひ今後も続けたい」と言っていただけたことです。
今後Schooを通して学習する習慣を広めて、「学びは時間に余裕がある人がやるもの」という思考を払拭し、学び続ける組織として、意識の改革を目指していきたいです。


変革を促すイノベーション人財や偶発的な出会いを期待

━━ 今後県庁内で学びを促進していくことで、職員にどのような変化や影響が現れることを期待していますか?

関口:どの業務にも多くのステークホルダーがいて、ありとあらゆる声が行政に集まり、職員は負担を感じやすい状況にあります。決めきれないもどかしさ、決めてしまったら自分の責任という苦しさの中で、もはや能動的に仕事を作り出すことが非常に難しい状態です。

そういった状況を変え、職員が働きやすく地域によい影響が現れるように、職員数を増やす方向へ見直しをしています。まずは職員たちに余裕をもってもらい、仕事以外にも人生のさまざまな良い機会を育んでもらう必要があるからです。

その上で、研修や学びの機会も活用しながら、それぞれが自分なりに描く社会や地域の実現に向けて自律的に取り組めるようになってほしいです。

━━ 県庁職員の学びの促進によって、県全体にどのような影響があることを期待していますか?

関口:かなり昔に遡る話にはなりますが、農畜産業の盛んな千葉県では、乳量の多い牛の精子を入手してくるようにと、かつて職員をアメリカに数カ月派遣し、あちこち交渉して回ってきたそうです。その結果、牛乳や乳製品の生産量を増やすことにつながり、現在の主要産業としての発展へと至ったという話を聞きました。

組織の中で目標を立てて行動するだけでなく、外に出て突拍子もない動きから偶発的に結果を出すような、イノベーティブな環境が必要なんだろうと思うところです。可能性は低いかもしれませんが、想定外のことが起きうる社会を期待したいですね。


■株式会社Schoo

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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