"オセロの四隅"から社会変革を目指す。創業から一貫してインパクトスタートアップであり続けるSchooが描く青写真とは
2022年の日本は、リスキリングに大きく注目が集まるなど社会人教育に大きな変化が起き、Schooもさまざまなチャレンジをした年になりました。
そして世界情勢が目まぐるしく変化し社会課題が山積する中、Schooは今後どのように歩みを進め、ミッション「世の中から卒業をなくす」/ビジョン「インターネット学習で人類を変革する」を達成するのか。激動の昨年を総括するとともに、2023年以降の青写真を代表の森に聞きました。
社会人教育の追い風に乗った2022年。リスキリングに国が1兆円投資を決定
——まずは昨年1年間の振り返りからお聞かせください。森さんから見て、2022年はどのような年でしたか。
代表・森(以下、森):2022年は急激な円安が起こり、スタートアップ銘柄の時価総額が停滞するなど日本経済は苦しい状態に陥りました。一方で、Schooがいる社会人教育のマーケットは国策としてリスキリングに投資する方針が掲げられ、我々は創業以来12年間で最も追い風を受けています。
ただし、追い風基調であるがゆえに他業界からも参入が相次ぎ、競争環境が厳しくなっています。そのため、競争に勝つためにより攻めの経営をはじめた、というのが2022年でした。
——攻めの経営において、特に注力したことはなんでしたか。
森:法人向けオンライン研修サービス「Schoo for Business」の認知拡大です。我々がミッション・ビジョンに掲げる「世の中から卒業をなくし、インターネット学習で人類を変革する」を達成して、少子高齢化を前提した日本社会の再興モデルを確立するために越えるべき壁はいくつもありますが、そのためにまずは企業、特に日本をここまで牽引してきた重厚長大な大企業が変わらなければならない。また、収益基盤の確立という観点でも法人導入はROIが読みやすい。攻めの観点と収益性強化による守りの観点、両面から法人事業の認知拡大へ注力を行いました。
具体的には、テレビCM・タクシー広告などのマスプロモーションをはじめとして、志を同じくする企業との提携も積極的に行いました。その結果、導入企業様はコロナ禍で約3倍の2700社と大きく成長しました。特に人財育成に非常に力を入れている、旭化成様をはじめとする大手企業の全社導入など、全面的な教育支援を弊社が担えたことは2023年以降にもつながる一大トピックですね。
——「Schoo for Business」は経済産業省後援「HRテクノロジー大賞」をはじめ数々の賞を獲得し、高い評価も受けていますよね。そのほかの新規事業は、どのような考えのもとで活動してきたのでしょうか。
森: 新規事業開発においては、ひとつの事業に集中しすぎないようにリソースを配分しています。まずは小さくともさまざまな事業や実証実験に着手し、勝機や確証が見えたタイミングでリソースを投入する考え方を経営の基本にしています。
小さくとも事業開発行動を実行せずに、市場調査ばかり繰り返していても真の市場動向をつかめません。リソース配分としては、アルファベットの「T」の文字をイメージして、横軸を薄く広げて新規事業の仮説検証を積み重ねながら、市場の変化をキャッチして「これはいける」と思った事業を縦軸に伸ばす経営が望ましいですね。我々のような規模の小さな企業は、市場が盛り上がってから参入するとどうしても大企業に負けてしまいますから、薄く広く展開し、リソースの投入タイミングを見誤らないことが重要だと考えています。
昨年でいえば、横軸に高等教育機関DX事業や地方創生・スマートシティ推進事業、未来の本屋研究所プロジェクトなどがあり、縦軸に伸ばしたのが法人向けサービスでした。国がリスキリングへ1兆円も投資する方針が掲げられましたし、人的資本経営のトレンドも不可逆。社会人教育事業に長年携わってきたからこそ勝機が見え、アクセルを踏む確信がもてたと思います。
創業時から手がけている個人向けサービスの「Schoo」も、いずれ縦軸に伸ばすタイミングが来るでしょう。「世の中から卒業をなくす」ためには欠かせない事業でもあります。
さらに新たな横軸として、移民・外国人労働者向けの事業に挑戦することを決めています。近い将来、この領域で規制が変化しそうだと予測しており、かつ日本再興戦略上、避けられないテーマだと考えているからです。
Schooの各事業本部は「オセロの四隅」。自分達にしかできないシナジーで社会構造を変えていく
——今後の経営方針を教えてください。
森:11年ほどこのテーマに向かい合ってきたプロセスで、少子高齢化が進んでいく国を、ヒトを起点に再興していくモデルの仮説を持つようになりました。社会人教育、高等教育機関DX、地方創生・スマートシティ開発、移民・外国人労働者問題の解決という4つの取組を柱とし、すべてを繋げていくという考え方です。それぞれの取組が単体で成長するだけでなく、相互につながって価値を最大化し、新たな社会構造をデザインする。一つ一つの取組が「オセロの四隅」となっていく事業展開です。オセロは四隅を取ると、その間にある石がひっくり返っていきますよね。複数の事業で隅を取れれば、シナジーを発揮して新たな価値を生み出し、より多くの人に影響を与えられるという意味で「オセロの四隅」と表現しています。
——Schooの事業ポートフォリオを社会人教育、高等教育機関DX、地方創生、移民・外国人労働者向けとしている背景にある考えや思いは、どのようなものでしょうか。
森:社会の構造を変えたいという最終目的があるからです。多くの人が学び続けることで、社会課題が連鎖的に解決されていくためのエンジンに我々はなりたい。株式会社Schooの成長シナリオはいくつか存在したと思いますが、この事業ポートフォリオは我々の強みが発揮できるという経営上の考えがありながらも、僕の思いも多分に含まれています。
少子高齢化が進む日本を経済面でも戦える国にするために、人を基点とした社会基盤をつくり、他国に対してもこのモデルを提供できるようにしていきたい。そんな社会的インパクトを生み出せる会社にしたいのです。
最近、社会課題を解決する事業に取り組むインパクトスタートアップが盛り上がっていますが、我々は「事業の社会的意義」を以前から意識し続けていました。たとえば、高等教育機関DXや地方創生に着手したのは2014年。社会課題解決にここまでの注目が集まる前のタイミングです。
創業から11年が経ち、次の10年を見据える中で「世の中から卒業をなくし、インターネット学習で人類を変革する」道筋が少しずつ鮮明になってきたと感じています。
社会人教育に「戦乱の時代」が到来した2023年、Schooの成長シナリオは?
——2023年は、どのようなことに注力していきたいと考えていますか。
森:大きく3つあります。まずは引き続き法人向けサービスに全力投球することです。この分野は国が大きな投資を決め、競争がこれまでにないほど激化していますから、チャンスを逃すわけにはいきません。「戦乱の時代だ」という意識をもって、Schooの収益基盤にすべくマーケットポジションを取っていきたいと思います。
次に「株式会社Schooはインパクトスタートアップである」ということを社内外へ強く浸透させたいと考えています。海外の機関投資家は投資基準に社会的意義を入れる傾向にありますし、採用面でも優秀な人材がより社会的インパクトのある企業へ興味をもつようになっています。この流れに乗って、資金・人材の両面で基盤を強化し、更なる社会課題解決事業へと進化していきたいですね。
そして3つ目は、「オセロの四隅」を具体的に連動させていくことです。今年、高等教育機関に向けてさらなる教育のDX化と、九州各地の自治体との連携を進めることになりました。移民・外国人労働者向け事業を除いたオセロの「三隅」をつなげるという、Schooならではの価値が生み出せると考えています。社内では、各事業部の連携の仕方を模索するチャレンジが待っていますし、Schooの事業シナジーを証明する試金石になるでしょう。
こうした活動によって経営をさらに盤石にし、ミッション・ビジョンを達成して日本社会の再興モデルを示すという青写真に向かって、インパクトスタートアップの代表格になれるよう成長していきたいと思います。