「インターネットで作ったちっぽけな大人のための学校」 ー学び手が"本当に欲しい学び”に泥臭く向き合った13年間の物語ー
プロローグ
「色々考えてみたけど、Schoolの「L」をとってSchoo。『世の中から卒業をなくす』でいこうとおもう。どう?」
東京は本郷の一泊4千円の旅館。「合宿」と称したビジネスプラン検討のロングミーティングが始まっていた。スタートアップ創業前のありきたりな風景だ。冒頭に森(創業者の森健志郎)が切り出した。
数ヶ月前に東日本大震災があり、仕事の予定がぽっかりあいてしまっていた私は「なにか生きた証を残したい」そんなことをぼんやりと考えていた。
「インターネットで大人の学校つくるってことや。めちゃ面白そうやん」
そこから14年、今も私はあの時のまま面白いと思っている。そして当時はその会社が13年後に「インターネットでの学びや教育を起点とした社会変革」を事業とする会社になるなんて。その場にいたメンバーの誰が想像できただろうか。
暑くなるのが少し早めの長い猛暑のはじまり。2011年のある夏の日、物語が始まった。
ご挨拶
本稿は弊社が創業来掲げているMission「世の中から卒業をなくす」にまつわるストーリーを知っていただくと共に、弊社が何を・どのように目指している会社であるかについて紹介するスクーメンバーによる寄稿記事です。
13年前から現在に至るまでの景色を創業期メンバーの視点でご紹介したいと思います。
「つまらない学びをゼロにしよう」
代表の森が起業前、会社員時代に抱いた「受講必須だった研修がつまらなさすぎて苦痛だった。インターネットでもっとおもしろくできるのでは?」という課題が創業の原点である。当初から社会人教育サービスを作るというようなアイデアではなかった。
「◯◯とはなにか?」を起業家やビジネス書の著者に生放送で聞けたらリアルな話も聞けるしおもしろそうではないか。まだサービスがない段階でもお声がけした皆様には快諾いただき、本当にありがたかった。我々が面白いと思ったものは、世の中でも求められているものだと確信を得られた。
toCサービスとしてスタートした「Schoo WEB-campus(現Schoo for personal)」は「インターネットにできた学校」として「教室」や「先生」など学校を機能として実装していった。
すべての社会人が「今学ぶべきこと」に出会え、安心して通うことができる学習プラットフォームを目指そう、ということである。この姿勢は創業以来変わらない。
2011年当時はまだインターネット動画配信の黎明期。オンラインかつリアルタイムでやりとりする「生放送動画」を配信するのにはプラットフォームもインフラも整っていなかった。スタジオで借りたマンションの回線を何度も引き直してネットワークを構築し、森の退職金と限度額いっぱいのカードローンを突っ込んで購入したカメラとスイッチャーとPCを使って配信を行った。
「学校には教務課の部屋よりも教室がなにより先だよね」ということでオフィスよりも先に自社動画配信スタジオを作ったのもこの頃である。
スクーは創業当初からエンジニア・デザイナー・学習コンテンツ企画ディレクター・放送スタジオを運用する技術者など幅広い職能を持ったメンバーが協働しながらサービスを開発運用してきた会社だ。現在ではセールス、カスタマーサクセス、マーケター、コーポレートなどさらに多種多様な人材で構成されているが、「インターネットの学校」というサービスは365日学習コンテンツを配信し、運用していくだけでも手間と労力のかかる事業である。それでも自社で配信したコンテンツ数はすでに8,500本を超えた。
ビジネスとしては非合理的だと言われることもあったが、市場変化を生み出し続けながら顧客課題に寄り添うためにも提供の即応性や体験品質の改善活動を考えても、そうやって始まった会社で良かったと思っている。
誰でも学びやすいコンテンツをたくさん提供し保有したうえで学習しやすいようにしていくことこそが中核能力であるからだ。
ここまでは「インターネット上にできたまだまだ小さな学校を、雨風につぶされないようになんとか大きくしようとしてきた歴史」と言っても良いのではないだろうか。
今では累計の会員数100万人を超え、導入企業累計4,000社という規模にまで育っている。これもひとえに、3,000人を超える先生方やステークホルダーの皆様、250人を超える社員・スタッフに「Schoolの「L」を取って世の中から卒業をなくす」ことへの共感をいただき、日々支えていただいたおかげだ。
法人事業の立ち上がりと「人生100年時代」の到来
toCサービスを提供する中で「自分の会社で使いたいから法人向けに提供してくれませんか」という声を複数いただいたことが「Schoo法人向けサービス(現Schoo for Business)」スタートのきっかけだ。現在では企業規模問わず累計4,000社以上の企業様にご導入いただいた。
2015年から提供を開始した法人向けのSchooは強制型研修と対比して「自発型学習」を掲げ、社員が自ら学びたくなるサービスとして提供を行っていたが、2017年の『LIFESHIFT』(リンダ・グラットン著)のヒットで「人生100年時代」が明確にうたわれるようになったことも、追い風になった。2020年のDX推進、2022年のリスキリングトレンドが到来したこともさらに「世の中から卒業をなくす」をより社内外で強く意識させられる事象となった。
労働人口減少に伴う経済の縮小、社会が持続不能になる可能性
「人への投資」を目的としたリスキリングへの推進トレンド
非財務情報開示の潮流からの人的資本の可視化と戦略目標・実績への反映
これらをまとめると対法人向けには「組織・人・社会の不活性」を捉えた「社会関係資本」と「ビジネス資本」への支援がこの5年間の法人のお客様への価値発揮となっており今後もこの流れは加速していくと考えている。
「インターネット上の学校に会社の大事な社員の皆様を預けていただけるサービス」を目指してこれからも一層力を入れていく。
「学び手」と「教え手」を広げ目指す「一生、学べる学校」
弊社の主な事業はオンライン学習サービス、特に法人向けのサービスが売上構成比の大半を占めるが、「高等教育機関向けDX」と「地方創生事業」は「教え手」と「学び手」をさらに繋いでいく取り組みと言える。
高等教育機関向けDXサービス
Schoo事業以外についてもご紹介したい。
2020年のパンデミックにより、学生がキャンパスにいけないという物理的な問題が発生した。学校法人には「建学の精神」に基づき、学生に平等に教育機会を提供するという使命がある。「受講できる人だけしてください」というわけにはいかない。これでは日本の教育の要が止まってしまう。学びの火を絶やさないために、我々にできることが何かを考えた。
「まだまだ小さいインターネット上の学校」ではあるが、ITを利活用した学習サービスの知見はある。これを届けられないか。そうして高等教育機関向けDXサービス「Schoo Swing」の提供を開始した。
大学の教職員方とお話をさせていただく中でわかったのは、2020年当時は、文部科学省の教学マネジメント指針による教育変革の真っ最中だったということだ。そこで求められていたのは、授業配信や課題提出のシステムに留まらず、学生の主体性を引き出す仕組みや、精緻な学習活動データであった。そこで個人向けサービスで培った学習の双方向性をベースに、法人向けに注力していたデータ分析機能を拡充し、提供させていただいた。
導入いただいた学校からは「オンライン開催にもかかわらず講師の熱が伝わり、授業に一体感を持てた」「引き出された受講生のやる気をキープしながら運営できた」「受講状況が正しく把握でき、より正確な指導につながった」という嬉しい声をいただいている。
地方創生事業
オンラインサービスは本来、全国からご利用いただくことができるが、利用の実態は首都圏に集中しており首都圏と地方で研修にかけられる予算のギャップや、情報の非対称性など、課題は様々だった。
現在スクーでは、自治体との連携によって、地域の企業に届けていく方法を探り始めている。2021年からは奄美大島5市町村と遠隔教育普及に関する包括協定を締結。住民への学びを広く届けており、特徴的なSchooを活用した5市町村合同新人研修をご紹介したい。
2会場をオンラインでつなぎ、奄美5市の行政・企業の新入社員が一同に介し、動画による講義やグループディスカッション、地域企業の講義や参加者の座談会を2日間で行う。前年の「修了生」も参加し、行政や企業の垣根を超えた先輩と後輩の関係性を構築した。
大学との取り組みとしては2014年より大学の授業や教養科目をSchooで配信していたし、地方創生についても2015年から学習環境の格差軽減に貢献することを目的とした地方自治体との連携を開始していた。
法人事業もこれら2つの事業も突然時流がきたわけではなく、兆しを捉え帆を張って極めて長い時間、風を受けるまで手漕ぎしていた結果訪れたものである。2011年の創業からスクーが挑んでいるのは「世の中に本当にほしい学びを誰も作ってくれないから、ユーザーも巻き込みながら生み出していく営み」ともいえる。つまり、面倒くさいことを泥臭く、長くやり続けていく意志である。
13年という時間はビジネスパーソンのキャリアとしては長いが、想いをかたちにするには短いのである。
「着席しました!」に込めた想い
最後に、Schooでサービス開始当初からある機能をご紹介したい。
Schooの生放送を受講すると「着席しました!」とタイムラインに表示されるのだが、これは「着席」を押すことで最初の一歩を踏み出してほしいという想いが込められている。
授業に登壇いただいている先生からしてもカメラに向かって淡々と喋り続けることは難しい。余計に緊張するから見てられない時間になってしまう。それでは「せっかく知りたい!学びたい!と思って受講したのに辛い」のである。
数百人が一気に「着席しました!」とタイムラインを埋め尽くす瞬間。「一生学べる学校=学び合う場」において最もSchooらしい瞬間なのだ。
「世の中から卒業をなくす」は13年の営みを経てやっと「ただのコピー」から「手触りのあるコンセプト」として捉えられるようになってきたと思う。インターネットの海は広大だ。スクーの「世の中から卒業をなくす」活動は、これまではもとよりこれからも関わっていただくであろう皆様と、さらに大きくしていけるはずである。
これまでに弊社のMissionを信じご支援いただいた皆様の想いを乗せてご挨拶に代えさせていただきます。
2024年10月25日
コンテンツ部門 中西孝之
■株式会社Schoo