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地方と世界を繋ぐコミュニティで、人々のポテンシャルを拓く刺激を生みたい。|池之上 清美

生まれ育った鹿児島県を愛しながら、一方で外の世界への憧れも持っていたという池之上さん。高校進学によって地元を離れて以降、自分の世界をどんどん広げていきました。

様々な刺激を受けて視野を広げた後に、改めて日本や地元の人々を見つめ直した時、「このままではいけない」という気持ちが強まったそうです。

彼女の「日本の社会課題を解決したい」というブレない強い気持ちはどこから湧いてくるのか。また、現在携わっているスクーの高等教育機関DX事業にどんな可能性を感じているか、聞きました。

池之上 清美 - 高等教育機関DX事業本部 Unit_BizDev
2016年にデロイトトーマツコンサルティング合同会社に新卒入社。コンサルタントとして、複数事業の支援に携わる。福島の高校生を対象とした人材育成プロジェクトの運営に携わったことをきっかけに、「教育」や「地方創生」などのテーマに強い関心を持つようになる。2021年8月に株式会社Schooに入社し、現在は高等教育機関DX事業本部の事業開発メンバーとして従事するほか、新入社員のメンターとしても活躍する。

地元・鹿児島でのびのびと過ごしつつ、「外の世界」に憧れた幼少期。

私は鹿児島県の大隅地方に生まれ、15歳まで過ごしました。地元は人口1万5000人ほどの小さな自治体で、すぐ側の海と山に囲まれてのびのびと育ちました。小さい時は道端の花の蜜を吸ったりして遊んだのを覚えています。

一方で物心がつくと、自分を囲むコミュニティの狭さや田舎特有の閉塞感もどこかで感じていました。だからなのか、幼い頃から勉強は好きでした。新しいことを知って視野が広がったり、自分の可能性が広がる感覚が好きだったんです。また、読書を通して自分が知らない「外の世界」に触れてはその世界に憧れたり、バラエティ番組の『世界ウルルン滞在記』を見ては自分とは異なる境遇の暮らしに驚いたりしていました。

特に印象深かったのは、小学生の時に読んだ『あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ』という本です。わずか12歳、本を読んだ当時の私と同じ年齢だったセヴァン=スズキさんが、国際会議の場で大人たちに堂々と、環境破壊を止めるよう呼びかけていた。それを知った時の衝撃は忘れません。このまま地元で過ごしていたら、きっとこんなことはできない。外の世界を知りたい。そう感じ始めたきっかけだった気がします。

砂漠となってしまった場所にどうやって森を蘇らせればいいのかあなた方は知らないでしょう? どうやって直せばいいのかわからないものを壊し続けるのはもうやめてください。
 私はまだ子どもですがここにいる私たちみんなが同じ大きな家族の一員であることを知っています。

セヴァン=スズキさんのスピーチより
△池之上さんが幼少期に読んで、影響を受けた本の一部。

大阪、東京、そして東南アジアへ。広がった世界から日本を見つめ直して、気づいたこと。

15歳にもなると生まれ育った地元を出てみたくなり、高校は大阪の私立学校に進学しました。「世界市民教育」を掲げて実験的な取り組みをしている高校(その後2015年に文科省のスーパーグローバルハイスクールに認定)で、オーストラリアからの交換留学生との交流やエストニア大使館の職員の講演など、私が知りたかった「外の世界」を存分に感じられる環境で、充実した日々を過ごしました。

卒業後は東京の大学に進学し、さらに1年間の海外留学も経験したことで、私の世界はどんどん広がっていきました。中でも印象に残っているのは、留学中の友達に会いに訪れた東南アジア諸国の人々です。生活は決して豊かではないだろうに、出会った子どもたちの眼差しは未来を見てキラキラしていて、何とも言えない強さがありました。

そうしてたくさんの刺激を受けて帰国すると、日本では「消滅可能性都市」というショッキングな言葉が話題になっていました。自分の生まれ育った地元が消滅するかも知れない事実を突きつけられて、焦りを感じたのを覚えています。

また、日本全体が東日本大震災の痛手の中でもがいていた頃でもあったので、人々が先行きが不透明な中で未来に対する希望を失ってしまったり、社会のシステムに対する不安感を募らせているのも肌で感じました。

バブル崩壊後に生まれた私は、「失われた20年」の中でずっと日本経済の停滞感を感じていましたが、この時いよいよ、このままでは日本が危ないという気持ちが強まりました。「日本の社会課題を解決したい」という今の私の根底にある想いの輪郭は、この時できあがったように思います。

大学という学びのフィールドを、社会に価値を生み出す「エンジン」に!

大学卒業後はコンサル会社に入社し、観光や農業など、様々な領域の事業支援に携わりました。経験の幅は広がったものの、しばらくは自分が心からの“Will(意志)”を持って取り組めるテーマは何なのかが分からず、軸を定められずにいました。

そんな中で福島の高校生を「未来を開くイノベーション人材」として育成するプロジェクトに携わった時、「これだ!」と感じたんです。人や地域に眠っている可能性を教育によって開くことができれば、私が感じてきた社会の閉塞感を打破できるんじゃないか。そう確信して、私の興味は「教育」や「地方創生」などの領域にフォーカスしていきました。

その数年後にスクーに転職したのは、ミッション・ビジョンに共感したのはもちろん、コンサルタントとして培ったビジネスの基礎力を活かし、今度は社会に対して新しい価値を生み出すための事業に当事者として関わりたいという意欲が高まったからです。

そして今、スクーの高等教育機関DX事業本部のメンバーとして、大学・専門学校での学び体験のDXを通じた「学修者本位の教育の実現」に向けたご支援をしています。

オンラインを活用した新しい時代の大学教育が広まれば、場所の制約を取り払い、学びたいすべての人に等しく教育を届けることができます。また、学びを通して将来の“Will”を見つけられたり、目指したいキャリアが定まったりしてその人の可能性が広がれば、とても素敵なことです。こうして大学を起点として人と地域の可能性が拓いていき、それがひいては社会課題の解決にも繋がると思っています。

私たちの「Schoo Swing」というプロダクトを核に、大学という学びのフィールドが社会の成長の「エンジン」になっていくような支援をしていきたいです。そのためにもまずは学生さんが自発的に学びやすい環境、そして教員の方々が教えやすい環境作りをしっかり実現できるようなサービスの形を、スクーのメンバーと大学関係者の皆様と一緒に共創しています。

生まれ育った環境だけでは、人生は決まらない。子どもたちに刺激を与えられる存在でありたい。

私のように地方で生まれ育った子どもたちの中には、外の世界と接する機会が極端に少ない子もいます。広い社会のことを知らなければ、社会が抱える課題に対して向き合おうという意欲は生まれにくいです。また何より、狭いコミュニティの中で価値観が更新されるような刺激が少ないことで、自分の未知の可能性に気付けないまま過ごしている子たちがいれば、それはとても勿体ないことだと思います。だから12歳の私にとってのセヴァン=スズキさんのように、私がその子たちに刺激を与えられる存在でありたい。

将来的には、地方と東京、地方と世界を繋ぎ、誰もがお互いに刺激を受け合いながら自分の無限の可能性に気づいていくような大きなコミュニティを作ることに興味があります。広い視野から自分を見つめ直した結果、地元の発展のために力を尽くしたいと思う人もいれば、世界に飛び出して活躍したいと思う人も出てくると思います。結果がそのどちらであっても、そんなふうに人々の成長のきっかけを作れるような教育を普及させたいというのが、私の大きな夢です。


株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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