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変化の時代の生存戦略は学び続けること、私が越境転職を決めた理由。

本日、スクーの新CCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー)に、滝川麻衣子が就任したことを発表しました。

記者・編集者として長年キャリアを歩んできた彼女が、なぜいま、スクーに異業種×異職種の越境転職をしてきたのか。ジャーナリズムの視点から、いまの時代や社会をどう見ているのか。社会人の学び直しやリスキリングのトレンドに何を期待しているのか。

新たにCCOに就任した滝川麻衣子に聞きました。


日本型雇用とグローバリゼーションの行き詰まり


——いまの時代をどう見ていますか?

社会構造が大きく変わるさなかにあると捉えています。

国内に目を向けると、日本型雇用の崩壊が今まさに起きています。40代半ば以上の人たちが見てきた社会では、新卒で大企業に入ることで、生涯の安定を得ることがひとつの解でした。ただしそれは、日本経済が成長していることが前提でした。

しかし、日本を取り巻く環境は大きく変わっています。例えば、日本企業の時価総額ランキングの変遷。1989年(平成元年)はNTTが世界第一位で、トップ50を日本企業が埋め尽くしていましたが、平成最後の2019年(平成31年)には、トップ50はトヨタ自動車の一社のみ。

日本企業の代わりに上位にあるのは、GAFAMを始めとしたアメリカ企業、アリババやテンセントなどを擁する中国企業です。

日本企業は既に、世界の第一線で戦うパワーを喪失しています。そうなると、日本経済の成長を前提とした終身雇用モデルは、もはや難しい。

いまの子どもたちが社会に出る頃には相当変わっているだろうと思いながらも、現役世代の私たち大人は、社会の将来像を示せていないのが現状です。


——世界全体を見た時の変化はどうでしょうか?

世界レベルで言えば、グローバリゼーションと民主主義の、いずれも行き詰まりが起きています。

グローバリゼーションの弱点はコロナ禍で決定づけられました。新型コロナウイルスがこんなにも世界的に広がったのは、国境を超えた経済活動や人の移動によるものです。ひとたびパンデミックが起きると、たちまち、原材料高、燃料高が連鎖して、世界各国が経済的に大ダメージを受けてしまう。

米中の世界経済における覇権争い、さらにはロシアのウクライナ侵攻で、民主主義国家と強権国家の対立軸も浮き彫りになりました。ウクライナ侵攻では核戦争の影もちらつき、まさに今が歴史的な局面にあると多くの人が肌身で感じていると思います。


——グローバリゼーション終焉後のあり方もまだ示されていませんよね。

そうですね。関連して、資本主義経済の行き詰まりも指摘されています。トリクルダウン(大企業や高所得者が富めば、やがて低所得層にも恩恵が降りてくるという経済理論)という考え方が一時期言われていましたが、もはやそれを信じることは難しいでしょう。

様々な社会問題や構造の限界が見えてきているけれども、次の答えや方向性はまだ見出せていない。走りながら考える…みたいな状況が、世界で同時に起こっているのが今の時代です。

不安定な社会における個人の生存戦略


——世界規模の社会変化の中で、個人としてはどう対応したらよいのでしょうか。

社会の方向性が示されていない中で、一人ひとりが自分の生き方を考える必要があります。

日本に立ち返って考えた時に、戦後の経済成長で弱体化した地域コミュニティの代替として、かつては会社が機能していました。

しかし終身雇用の前提が崩れてしまっては、生涯にわたって「会社」が人々の居場所ではなくなります。加えて、日本の場合は少子高齢社会で社会保障費が膨れ上がり、公助の仕組みが弱まっています。

そうなると、私たち個人は自律的なサバイバルを強いられます。

「日本は安い国になっている」という話が最近話題になりましたが、実際その通りで、日本の雇用の平均賃金は全然上がっていません。過去30年間(1990~2020年)で先進各国が大幅に上昇したのに対し、日本はわずか107%(OECD全体では133%、米国は148%、韓国は194%)。そうした賃金低迷の背景には、非正規労働者という立場の弱い働き手が多くいることを理解しないとなりません。労働賃金が安いから物価も安いのです。

世界や時代の流れを俯瞰してみると、実は日本は相当に厳しい状況の中にあることが分かります。しかし、公のセーフティーネットが心許なく、守ってくれるコミュニティもなくなってしまった。社会のあり方は模索を続けるべきですが、個人も自分の生き方、生存戦略を考えなければいけません。


——変化の時代の生存戦略……そのカギはなんでしょうか。

個人においては、学校を卒業して社会に出てからも学び続けること。企業においては、リスキリング(人材の再開発)や人材投資だと考えています。

それこそが、新聞記者、インターネットメディアの編集者を経て、私が「社会人の学び」のスクーで働くことを選んだ理由でもあります。

スクーに越境転職をしたワケ


——スクーへの転職について、詳しく教えてください。

前職のインターネットメディアの立ち上げ期を終える頃から、約20年携わったメディアの仕事を離れ、違う業界でやってみたいと漠然と考えていました。

これまでの経験を違う業界に波及させ、異なるカルチャーとミックスさせることで新しい価値を作れるのではないかと。

ではどんな業界や会社がよいか。大前提として「社会を前進させること」を念頭に置いている会社で仕事をしたいと思いました。

スクーは教育という公益性の高い事業を行っていますが、その内容もエリート教育ではなく、社会の底上げに寄与するサービスだと思っています。そう考えると、コンテンツを通じてこれまでの経験を活かすということと、社会や文化の前進に貢献する企業で働くということが、両立できると直感しました。


——滝川さんとスクー、互いのミッションがリンクしたのですね。

はい。考えていることが同じだなと思いました。私は新聞社とインターネットメディアを通して、労働市場や働き方の取材をずっとしてきました。

労働市場の課題に対する私の中の一つの結論は、人材投資の重要性でした。また、キャリアコンサルタント取得の勉強もしましたが、そこでも同じことに行き着いたのです。

自己投資としての学びです。

企業による人材投資と個人の学びは表裏一体の課題です。莫大なコストをかけて採用するよりも、人に投資する方がある意味、合理的ですし、真っ当です。また、約束された安定がない社会においては、個人が学び続けて、変わり続けることが重要です。


——仕事を通して社会の前進に貢献したいという思いは、いつからあったのでしょうか。

今の私のキャリアの基盤を形作っているのは、間違いなく新聞記者時代です。毎日ニュースが生まれる仕事なので、場数はかなり積ませてもらいました。

経済記者が長かったのですが、今の価値観のベースには、事件の取材を担当した地方支局での記者として最初の4年間があります。殺人や子どもの虐待死といったむごい事件取材がいくつもありました。事件が発生すると殺人現場の聞き込みから始まり、犯人の逮捕、起訴後は裁判までずっと追います。

そうした経験を通じて感じたのは、法廷と傍聴席を仕切るバーを乗り越えるのは実はとても簡単だということ。バーの向こう側(被告人や裁判官のいる法廷)にいるのか、こちら側(取材記者のいる傍聴席)にいるのかは紙一重だなと思いました。

生まれた環境によっては私も向こう側にいたかもしれない。社会は安全な場とそうでない場が永遠に分断されているわけではない。

生まれた環境や陥った苦境を乗り越えられる、誰にも等しくチャンスのある社会であってほしいと考えるようになりました。


——その後転職し、「Business Insider Japan」の立ち上げに参画されましたね。

Business Insider Japanの立ち上げでは、年代やバックグラウンドを超えた人たち、尊敬する上司との仕事の機会に恵まれました。長時間労働問題、働き方や価値観の多様化などを発信して、生まれたばかりのメディアを一定の軌道に載せることができたと実感しています。

そこでもベースには、生まれ育った環境による理不尽や、旧来の価値観を乗り越える、弾力性ある社会であってほしいという思いがありました。

社会課題を解決するための「学び」というアプローチ


——報道の仕事を通して心に抱き、スクーでも追求していく「社会の前進」というテーマ。そのために重要なことはなんでしょうか。

1つは、持続可能社会への移行です。資本主義経済の限界が顕在化し、別のやり方でビジネスをしようという動きが出てきたことは希望です。

もう1つは、利他的な考え方の広がり。利己ではなく利他の方が、最終的には合理的だと考える人たちが増えていくことを期待しています。

自分や家族だけが豊かでも、社会が変わらなければ幸せになれないと気づいた人が増えつつあるのは事実だと思います。それだけ、危機感が高まったということです。

それによって価値観のパラダイムシフトを受け入れる人が出てきたことは、明るい兆しです。

転職後、ちょっとした驚きがありました。

スクーの20代男性社員に「どうやって、仕事と子育てを両立しているのですか」と聞かれました。女性からは定番の質問でしたが、男性から受けたのは初めてだったので、そのエピソードをツイートしたところ、2万件以上の「いいね」がついて。新しい時代の変化への共感や期待の現れだと感じました。

滝川麻衣子Twitterより(@maikotakigawa1)


——そうした社会の前進に対し、日本における課題はありますか。

日本社会においては、「多様性の低さ」と「DXの遅れ」が課題です。また、日本においてイノベーションが起きづらい実態が指摘されていますが、それも多様性の低さとDXの遅れに起因している話です。

日本の特に大企業は新卒一括採用、終身雇用で長らくやってきたので、組織の多様性は乏しい。

DXに対しても、デジタル人材の育成には投資をせずに、配置転換やOJTで補おうとしてきました。そうしたメンバーシップ型の人事制度では、外部からDX人材は入って来づらいし、それゆえ内部でも育たない。その結果、DXは進まないという負の連鎖が起きていました。

多様性に乏しい組織からはダイナミズムは生まれません。


——多様性を高めるために必要なことはなんでしょうか。

異質な人材を登用することです。これからの時代、性別や年代、国籍に関わらず、能力のある人材を登用していかなければ、企業も日本社会もますます競争力を失っていきます。

これまでの成功体験に縛られず、新しい分野でも活躍する越境人材が注目されています。実際に異業種・異職種への転職が増えてきているという調査もあります。

人材流動性の高い社会になっていくと、自分が成長できない会社にいることはリスクだと考える人が増え、人に投資する企業が選ばれるようになります。企業は選ぶ立場から選ばれる立場になるという変化は、DXを契機にすでに起こり始めています。

その変化を前提に考えると、繰り返しですが、企業の人材戦略としてはリスキリングや人的投資が重要になりますし、個人の生存戦略としては学び直しによる自己投資が一番、希望になります。

企業が人に投資をし、個人が学び続けることで、社会が前進する。学びのポテンシャルであり本質は「社会課題に対するソリューション」であると考えています。それを実現するために、私はスクーでの仕事を選びました。

——最後に、越境転職となるスクーにおいて、新CCOの意気込みを聞かせてください。

編集者、ジャーナリズムの視点というのが自分の武器であり特性なので、それをスクーにもインストールしたいと思っています。そうすることで、化学反応が起きるという確信があります。

例えば、編集者の目線からは、これからを生きるのに知っておいた方がいいテーマがいろいろあります。そういった視点をスクーの授業コンテンツや事業にも活かせたらと思っています。

もちろん私自身が、異なるバックグラウンド、多様な年代のスクーの同僚たちから新たな視点をもらうことも多いのです。

Schooの授業コンテンツの今後の方向性について、社長の森健志郎やメンバーと日々議論してきました。「時代にリンクした学び」というコンセプトのもと、4つの新領域を定義し、新しい学びのコンテンツづくりを始めているところです。


日本では、タテ割りの組織構造や流動性の低い社会が続いてきましたが、だからこそ、越境することで起こる化学反応があるわけです。そのケミカルリアクションこそが、学びであり、成長につながると信じています。

それは「編集」の考え方でもあるのですが、多様なメンバーによる「異質の」掛け合わせにより、新しい変化が生まれる。

急成長しているスクーには、さまざまのバックグラウンドを持つメンバーが集まってきています。変化の連鎖が起きることで、スクーはもっとパワーアップできると信じています。

変化を続ける私たちスクーが仕掛ける「社会の変革」に、どうぞご期待ください。


株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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