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すべての学生に、社会で活きる学びを。 大学・高等教育機関のDXが実現する「学修者本位の教育」

2020年、突如発生した新型コロナウイルスの脅威によって、社会全体がこれまでにない変化を余儀なくされました。その影響は生活のあらゆる場面に及びましたが、多くの教員・生徒が集まる「学校」も、様々な課題に突き当たりながらも急速なオンライン化を進めてきました。

しかし、Schoo(スクー)で高等教育機関DXプラットフォーム事業の責任者を務める野島亮太さんは、「大学のオンライン化にはコロナへの対応以上の意味がある」と語ります。なぜならSchooは、学びのオンライン化は、一人ひとりの人生を、そして社会をより良い方向に変えていけると信じているからです。

今、企業のみならず、政府、自治体、大学、教育機関など、あらゆるところでDX(デジタル・トランスフォーメーション)の差し迫った重要性が叫ばれています。では、大学のDXはなぜ必要なのか、それによって解決すべき日本の教育課題とは何か、またSchooはどのように課題解決に貢献していくのかを野島さんに語ってもらいました。

株式会社Schoo 執行役員 プラットフォーム事業責任者:野島 亮太

コロナ禍を機に変化が加速した大学教育

コロナ禍の影響で、世の中のオンライン化が加速した2020年4月

Schooは2014年以降、テクノロジーの活用によって少子高齢化・急速なグローバル化に対応可能な「これからの大学・学校教育」の実現を目指して、21の大学・高等教育機関と提携して高等教育におけるオンライン活用に関する様々な実証実験やDX支援を行ってきました。

そして2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、大学・高等教育機関は急遽オンライン授業への転換を余儀なくされ、以降様々な課題を乗り越えながらその変化に対応してきました。皮肉にも、コロナが要因となって大学・高等教育機関のDXが加速したと言えます。

最初の緊急事態宣言が出された2020年3月、Schooは「大学授業のオンライン化 お悩み無料相談窓口」を設置しました。相談窓口には全国の高等教育機関から多くのお問い合わせをいただき、そのほとんどが対面授業からオンライン授業への転換の仕方についてでした。その後2020年12月には、高等教育機関・社会人教育事業者向けの教育特化型オンライン配信システムやDX推進コンサルティングサービス等も提供開始しました。

Schooが培ってきたノウハウや知見を提供することで、大学やそこに通う学生さんを支援したいと考えたからです。外出自粛があったとしても、学びは止めてはいけないという強い思いがありました。

<Schooによる高等教育機関DX支援拡大の流れ>
「大学授業のオンライン化 お悩み無料相談窓口」を設置
(20年3月)

教育機関向けDX推進サービス提供開始(20年12月)
ハイブリッド授業化に関する無料相談窓口を設置(21年1月)
「Schoo Swing(β版)」リリース(21年6月)
「Schoo Swing 正式版」リリース(21年9月)

2021年以降はオンライン教育の「質向上」が課題に

そんな中、2021年4月以降はいただくご相談の内容に変化を感じています。その背景の1つは、オンラインでの教育提供の形が一旦できたからこそ、教職員の負担やオンライン教育の質の問題など、新たな課題が生まれているということ。もう1つは、今後の大学経営を見据えて、社会人などの新たな学生を獲得したいというニーズが顕在化してきているということです。

この、「大学におけるオンラインを活用した教育の質向上」という議題に関連して、コロナ禍の前に遡り、2020年1月に文部科学省の中央教育審議会大学分科会が取りまとめた「教学マネジメント指針」について触れなければと思います。

『教学マネジメント指針』が指摘した大学教育の転換の必要性

社会で活躍する人材の輩出が至上命題

教学マネジメント指針の根幹は、「学生にとって本当の意味で良い教育を提供できているか」という問いだと解釈しています。これは決して大学だけの問題ではなく、VUCA時代の社会構造上の課題が大きいです。

日本において最も大きな前提としてあるのは、少子化によって国内の学生は減少傾向であること。人口減少の中で国力の衰退を食い止めるためにも、社会で活躍する人材を輩出することは大学の重要な役割です。そのために、大学側は学問を提供するだけでなく、社会の流れや要請を踏まえた上で、「社会で活きる教育」を提供する必要があります。また産業界側も、「学歴」ではなく何を学んだのかという「学習歴」を評価する必要があります。大学での研究成果を産業に活かしていく動きも今以上に必要です。

鍵を握る「学修者本位の教育」への転換

『教学マネジメント指針』で具体的に目指されているのは、「学修者本位の教育」への転換です。各学校はそれぞれの特色を活かしつつ、社会の流れや要請を踏まえて、学生にとって意味のある教育、社会に出て早期戦力化がかなうような教育を提供していく必要がある、というものです。

ポイントは①カリキュラム(教育内容や実践に重きを置いた構成等)、②教育提供手法(オンラインとオフラインのハイブリッド活用・インプットとアウトプットの組合せ等)、③学生の主体性や理解向上の促進(学生サポートの充実)の3つだと認識しています。それらを実現するためには、教育システムのデジタル化、データの活用、そして、大学全体のDXが必要であると考えています。

学生を主語にすると、もっと主体的に学ぼうとする姿勢が必要ですが、そもそも「大学で学んだことが社会でどう生きるのか」が分からないという問題もあるのではと思います。社会人15年目の身として強く感じるのは、仕事で成果を出すためには、過去に学んだこと以上に学び続けることの方が重要だということです。初めてぶつかる課題に対して、何をどう学ぶか、つまり「学び方」が仕事の成否を分けると言っても過言ではありません。学校側はもっと学生の主体性を引き出す工夫に加えて、「学び方」を身に付けさせてあげることも必要だと思います。

良質なオンライン教育の実現が、社会人・海外留学生を大学に呼び込む

抗えない少子化の流れがある中で日本の高等教育機関が存続していくためには、新たな学生層を獲得する必要があります。具体的には、社会人と留学生です。2021年12月に発足した内閣府「教育未来創造会議」のメインアジェンダの一つは「社会人の学び直し」です。経済界でも「リスキリング」の重要性が高まっています。

社会人の学び直しに関して文部科学省の資料によると、日本の大学における社会人学生の比率は2009年時点で2.0%しかなく、諸外国と比べてもかなり低い(OECD平均は21.1%)のが現状です。裏を返せば、ここに日本と日本の大学の「伸び代」があるとも言えます。

日本における社会人の大学入学率[資料2枚目](出典:OECD教育データベース(2009年))

社会人や海外留学生を獲得するために、オンラインを活用した良質な教育の提供は1つの解決策となります。時間や場所にとらわれないオンライン授業やハイブリッド授業を高いクオリティで提供できると、忙しい社会人が業務と学び直しを両立しやすくなりますし、海外からの留学生を呼び込みやすくなります。(※現在の規定では、すべてオンラインで学位を取得することはできません)また、他学校・地域・産業等との連携による新たな教育プログラムの提供など、オンラインを活用することで新たな学びの可能性が広がります。

冒頭で「大学のオンライン化の潮流はコロナ以前から始まっていた」と話しましたが、私たちがそう考える理由はここにあります。

オンライン学習の先駆者であるSchooだからできる大学への貢献

学びたくなる仕組みと学習データ活用による大学教育の質向上

大学での良質なオンライン教育の実現に欠かせない2つの要素があります。それは「学生の主体的参加を促す仕組み」「学習データの活用」です。

Schooはこれまで約10年間にわたってオンライン学習サービス「Schoo」を運営してきました。「Schoo」の生放送授業は、受講生がそれぞれ異なる場所からオンライン上の「教室」に集まって一斉に受講するもので、仕組みとしては大学のライブ授業と同様です。授業には講師と受講生による質問と回答、受講生同士での意見交換といった双方向のやり取りを組み込んでおり、授業への主体的な参加を促す設計になっています。また、生放送に参加できなかった人は、好きな時間にアーカイブの録画授業を受講することができます。

「Schoo」の生放送の様子。画面左の「タイムライン」には、受講生のコメントが流れている。

これらの「Schoo」の特徴は、大学のオンライン授業形態とそこで目指す理想の受講体験にかなり近く、DX推進アドバイザリー契約を結んでいるいくつかの大学において、当社のノウハウをもってオンライン授業化のハード&ソフト両面でご支援しています。

もう一つの「学習データの活用」については、オンライン授業を配信するためのツール(CMS)と、授業とその前後を含む学習管理のためのツール(LMS)が異なっており、学習全体のデータを管理できていないという課題があります。また、オンライン授業関係のツールがばらばらであるため、教員側の管理負荷が大きく、学生の授業への反応が分かり辛いという課題は多くの大学に共通の悩みです。

そこでSchooが独自開発したものが高等教育機関DXプラットフォーム「Schoo Swing」です。「授業中はもちろん、授業前から授業後まで オンラインの教育フローを一元化」をコンセプトにした、高等教育機関に特化したCMS/LMS一体型のクラウドベースの学習管理・配信プラットフォームです。2021年9月のリリース以後、すでに複数の大学に導入いただき、大学側の要望を取り入れながらプロダクトを進化させています。

コロナ禍を機とした授業のオンライン化だけでなく、「教学マネジメント指針」が目指すところの教育の質向上や学習成果の可視化の要請が高まる中で、学生の学習に紐づくデータの集約・可視化は、これからの大学教育には必須の要素となります。

これまで、多くの大学関係者とお話しさせていただきましたが、社会人・海外留学生の獲得やその前提になるオンライン化の必要性と学習データの活用については、ほぼ全ての大学が大枠で合意している印象です。ただ、それを具体的にどう進めていくか、いつまでの達成を目標とするかという点では、各校さまざまな検討課題があるように受け取っています。

学び続ける人になるために、大学での学びを「楽しい」と感じて欲しい

これは私見ですが、本来、学ぶという行為は主体性の塊のようなものです。誰かに強制されて学んでいてもだめで、学ぶことが楽しいとか、学びが役に立ったとか、その人がポジティブな感情になって初めて学んだことが身に付くものだと思っています。

そのため、社会に出てからも学びを継続するためには、学ぶことが本業である大学生までの間にこうした「ポジティブな学び体験」を得ておくことが必要です。逆に、学生の間にその体験を得られなかったのに卒業後も学びを継続しなければならないというのは、多くの人にとって苦痛なことだと思います。

私たちが提供している「Schoo Swing」の名称には、大学・高等教育機関での学びを武器に世の中に羽ばたいて欲しい(wing:翼)という願いと、社会に出て学びの重要性・尊さに気づいた時に再び大学に戻ってきて欲しい(swing:ブランコ)という期待を込めました。

「Schoo Swing」を通して学生の皆さんが楽しく価値のある学びを得られること、そしてその体験を忘れずに、社会人になっても学び続けることが自然だと感じられるようになってほしいと祈っています。それが、「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げるSchooの切なる思いです。

株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する


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