外資系キャリアの中で芽生えた日本人としての矜持。学びの提供で日本の未来を照らしたい。|和田 由可
幼少期にマレーシアでの暮らしを経験し、日本企業や日本人が国際社会で放つ存在感の大きさを肌で感じていたという和田さん。社会人になってからは外資系の経営コンサルティング会社と事業会社を経験してきました。ビジネス知力を高めつつ「日本流」にとらわれない働き方やキャリアの築き方に馴染む一方で、生まれ育った日本という国への客観的な視線は常に持ち続けていたそうです。
そんな和田さんだからこそ、近年の日本の国際的プレゼンスの低下に対して「悔しい」という感情が湧くのだと言います。
「学びの提供を通して、志ある日本の若者の未来を応援したい」という和田さん。学びは世界に飛び込むための「共通言語」であり、世界と戦うための「武器」だという理由を聞きました。
20年間で7社を経験。外資系コンサルで培ったビジネス知力と、日本への視線
私は2002年に外資系経営コンサル企業に新卒入社しました。当時はコンサルタントが人気職種になる少し手前で、中途採用中心だったコンサル業界が少しずつ新卒採用を始めたころでした。たまたま参加したインターンシップで出会った上司や先輩が、頭脳明晰の「THEビジネスパーソン」でありながら人間的にもとても温かく、こんな素敵な人たちと一緒に仕事できたらいいなと思ったのが入社の理由でした。
それから現在まで、スクーを含め7社を経験してきました。そのうち3社は経営コンサルティング会社で、それ以外は事業会社です。第二創業期を迎えた教育系企業の新規事業や、商社の経営企画部門でのM&A担当などを経験した後、30人ほどのヘルスケア系のスタートアップで財務経理の責任者をしていました。
コンサルティング会社や事業会社という立場の違いはあれど、私にとって仕事を選ぶ上での大きなテーマは「非連続な変化を遂げようとしている会社をチームで支える」ことです。経営環境が変わってしまったり、社運をかけたM&Aを実施することになったりと、これまでになかった課題に直面した場面で、プロジェクトチームで膝を付き合わせて検討して物事を前に進めていく、そんな働き方が性に合っていると思っています。
20年間で7社経験してきたということは、良く言えば好奇心旺盛、悪く言うと落ち着きがないのかもしれませんが、振り返ってみると、その時々取り組んできたことが何かしら繋がって、面白い経験になっていると思います。やりたいと思ったことには勇気を出して飛び込み、そこで出会った人々との1つ1つの縁を大切にしてきた結果、思いもしなかった方向に世界が広がりました。スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチ“Connecting the dots”のように、直観で道を選択して、振り返った時にストーリーができている人生ってすごく素敵だと思うので。
こういう考えになったのは、新卒の時から外資系の企業文化に馴染んできたことが大きいと思います。一つの会社で長く勤め続けることだけが正義でもありませんでしたし、日本人以外とチームを組んで一緒に働くこともあったので、多様な文化に触れる機会にも恵まれました。その中で、自然と日本企業や日本人のことを外から客観的に見るようになったと思います。
日本の国際的プレゼンスの低下を肌で感じて「悔しい」
幼少期にマレーシアに住んでいたことがあるのですが、そのころの日本人や日本企業はただそこに居るだけで一目置かれ、信頼や憧れの目が向けられていました。また2000年頃までは、欧米のMBAでクラスに日本人がいると、トヨタ生産方式など日本の知恵を学べると歓迎されたといわれています。英語が多少苦手だったとしても、そこに日本人の居場所があったんです。
近年、アジアが目を見張る発展をしてきたことは喜ばしいのですが、当時と比べると日本人や日本企業の存在感、一目置かれている感じは明らかに弱くなっているように思います。
かつて日本は第二の経済大国として世界のGDPの2割近くを占め、1989年時点の世界時価総額ランキングでは、トップ50のうち32社が日系企業でした。ところが今では、GDPランキングでは中国に抜かれ、世界時価総額ランキングトップ50に入っている日系企業はトヨタ自動車のみです。ずっと日本国内にいるとなかなか気付きませんが、国際社会や世界経済での日本のプレゼンスは明らかに低下しています。
この国で生まれ育った人間として、そのことが純粋に、すごく残念に思うんです。日本人や日本企業がもう一度世界の中で存在感を取り戻し、頼りにされる存在になるために、ひとりひとりが、またその人たちが働く1社1社が、世界で戦えるように強くなっていくことを何らかの形で応援し、貢献していきたいと思ってきました。
世界に自分の「居場所」があることの重要性。学びはそのための武器になる
世界の中に自分の居場所を確保できること、自分が価値貢献できる軸足があるということは、生きていく上でとても大切で心強いことです。私はそれを、アメリカ系のコンサル会社に在籍していた時に実感しました。
東日本大震災の後、国内で実施するプロジェクトが蒸発してしまっていた時期に、当時の私としては専門外だったのですが、米国のチームが主導するフォレンジック(不正会計の調査)のプロジェクトに、日本子会社の調査担当として参画することになりました。
米国から来ていたチームメンバーが会社の会計処理や法廷に提出する資料の見せ方について話している中、私は議論に入っていこうとするものの、ほとんどついていけませんでした。言葉や単語はわかるのに会話の意味がわからない…。これは会計の概念の理解が十分ではないからかも知れないと思い、概念を体系的に学ぶため、コンサルタントの仕事をしながら週末に資格スクールに通い、米国公認会計士(USCPA)の資格を取得しました。
概念そのものの理解が深まると、その時さっぱりわからなかった議論の意味を霧が晴れるように理解することができました。体系的な学びが、多国籍チームの中で自分の役割を果たすための可能性の扉を開いてくれたんです。
学びは、世界の人々と同じ土俵に立って議論したり、一緒に価値創造していくための「共通言語」を獲得する行為であり、同時に世界の中で自分の存在感を発揮するための武器でもあります。スクーの提供する学びが次世代の人たちの糧になって、その人たちが世界で活躍する未来を応援したいと思っています。
変化の最中であるスクーで、「攻め」と「守り」の両方に挑戦したい
スクーは今まさに、IPOを目指してもう一段変化を遂げようとしている途中であり、私にとっても魅力的なフェーズにあります。
スクーがミッション・ビジョンを実現していくためには、会社としての存在感を今以上に示すことが何より重要だと思っています。そのためにどうすればいいのか、どうすれば市場で勝てるのか、知恵を絞って考える必要があります。
私の今までのキャリアを踏まえると、どうやればビジネスが伸びるかという戦略立案など攻めの部分は得意分野です。一方で、これからIPOを目指す会社の管理部門としては、会社が守るべきルールの番人の役割も求められます。
経営企画というポジションでは、その両方を経験できます。どちらも必要な時に対応できるように、今はまず知識を蓄えておく時期だと思っています。
ワクワクするアンテナが立ったものは、やれるうちはすべて挑戦してみたいです。現実には、予想外の困難に直面することもありますが、10年後に振り返った時に「あれは面白い経験だった」と思えるよう、ポジティブに「面白がり力」を発揮していきたいと思っています。