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なぜSchooは「大学DX」と「地方創生」をやるのか?社会人の学びがつくる真の価値とは

コロナ禍を経て、社会人の学びに変化の大波が訪れています。「世の中から卒業をなくす」ことをミッションに掲げ、オンライン学習の可能性と必要性を追求してきた「Schoo(スクー)」はなぜ、社会人向け動画学習サービスのみならず、大学のDX支援や地方創生にまで踏み込んでいくのでしょうか。

Schooの森健志郎社長に聞きました。

前回のインタビューでは、オンラインでの学びが浸透することでどんな社会変革が期待されるのか、そのためにSchooが担う役割とは何かを聞いています。

なぜ今「高等教育機関への支援」と「地方創生」なのか


——
前回「日本のすべての人たちの学びの底上げに貢献していきたい」という話がありましたが、その意図を詳しくお聞かせください。

Schooはエリート向けコンテンツに特化せず、一般の方に向けた間口の広い学びコンテンツを、インターネットによって全国に展開してきました。誰もが30万〜40万円する講座を受けられるわけじゃない。地域によるGDPの差もありますし、そもそも都心で展開されている講座を地方の方が受けに来ることだって難しい。

だからこそ、そこにSchooの存在意義があるし解決していかなければならない社会課題があります。都心で一部のエリート社会人が学ぶことだけでなく、一般の方たちに学校卒業後の「学び」が広がっていくことこそが、未来に向けて社会全体のリテラシーを上げていくことに直結すると考えています。

では、その「社会のリテラシー向上」に対して、ここから先、インターネットの授業にとどまらずSchooとしてどんなアクションを起こしていくのかーー。そこに対する答えは、「高等教育機関への支援」と「地方創生」です。

大学DXと自治体提携に込める思い


——具体的にどのような事業に着手しているのか、教えてください。

まず私たちが今力を入れているひとつが、大学など高等教育機関向けのDXプラットフォーム「Schoo Swing」です。「スウィング」には、「揺れる」という意味がありますよね。そこに込めたのは、大学を卒業して企業に就職してからも、「また大学に通い直したい」「学び直したい」と思って、ブランコのように戻ってきてもらえるような教育機関にしてほしい、その入り口としてこのプラットフォームを使ってほしいという思いです。

大学での学びが全然面白くなかったら、「また大学で勉強しても面白くないしな」と、スウィングして戻ってきてくれないですよね。だから、最終学歴になりやすい高等教育の場での学びを、オンラインやデータを活用しながら、より良いものに変えていこうという思想をもってサービスを展開しています。

——社会全体のリテラシーの向上という点において、自治体との連携にも力を入れています。「地方創生」に向けた事業は、今どのようなフェーズに入っているのでしょうか?

今は提携する自治体を増やしているという状況ですね。これまで提携いただいた自治体数は20以上、商工会議所などの地域団体を含むと40以上。2021年の10月に「地方創生・スマートシティ推進室」を立ち上げて、このプロジェクトをどのように掘り下げていくのか、プランニングしている段階です。

これまでの提携自治体は、全国的に見ると南の方のエリアに多いですね。

今後地方のアセットを生かしていくということを考えたとき、いかに外貨を稼げるようになるかが重要です。遠隔教育に力を入れて、イノベーションが活発化する。そこから技術力や生産物を海外に輸出していき、外貨を稼ぐ。

内需に頼らず経済を潤し、日本のGDPを上げる……という好循環を目指していこうという時に、グローバルアクセスのしやすさから、南の方の地域と相性は非常によかったのかなと思います。

ただ、北海道だってロシアにアクセスしやすいですし、距離だけがグローバル競争における優位性とは限りません。今後はさらに、提携地域を増やしていき、新たな可能性の創出に貢献していきたいですね。

——2021年末、文部科学省が10兆円規模の大学ファンドの立ち上げを発表しました。グローバルでの日本の大学競争力低下、研究力低下への対策が狙いなわけですが、大学運営の危機感は年々高まっていますね。

ファンドについては、基金の運用を内製化しなければならないことへの不安の声や、財政面よりも人材確保が急務の課題ではないのか、といった疑問の声が上がるなど、決定的な解決策にはなり得ていない印象です。

そもそも、日本と海外の大学を比較した時に、その運営に関わるビジネスサイドの人材が日本は少なすぎると感じます。教授1人あたりの大学職員の数は、海外と日本のトップ大学の比較では3倍以上の開きがあるというデータがあります

必要な研究費・寄付金を集めたり、事務職員や秘書といったサポート業務をしたりするスタッフの数が、日本の大学では少ないということだと思います。

教授の皆さんの仕事は、日本の研究力を高めたり、講義の質を上げて、人材育成に努めることです。その本業に集中してもらうためには、研究資金の効率的な運用や、研究成果を実用化させていくためのビジネスサイドの人たちの層を厚くしていく必要があります。

資金を集めて研究力を上げていくという国の方向性は正しいと思いますが、その流れに組織として追いついていない、というのが日本の大学の現状ではないでしょうか。そして、この部分にこそ、私たちSchooが介在できる余地があるはずだと考えています。

ようやく日本は今、企業と大学・個人・地方創生と多角的に、改めて「学び」の必要性を理解し始めています。

そのなかで今後は、単純に企業が社員を大学に通わせるだけでなく、大学をビジネスのフィールドとして捉えて企業がアプローチしていく機会が増えていくだろうし、企業と大学の連携はもっと増やしていかなければならないとも思います。

——Schooは高等教育機関と企業のコネクタ的な役割を目指しているとのことですが、これは国としても「産学連携」を掲げ、注力してきたはずですよね。民間でなければ実現できない面はありますか?

むしろ、縦割りの政府機関では難しいと思うんです。例えばハローワーク経由で、既卒の学生さんの再教育と就職支援をする場合、「既卒への取り組みは経産省」「再教育は文科省」「ハローワークを動かすのは厚労省」といった具合に、3省が合同プロジェクトとして取り組まなければ成立しないんですよ。複数の省庁を1カ所で束ねて、ワンストップに進めていくことができないんです。横軸で課題の解決を目指す企業からすると、もっとフレキシブルに動けることがあるんじゃないかと考えてきました。

大学と企業を横並びでつなぐというという点においては、横軸を得意とする民間企業がやらなければいけないことだと思いますし、そこにビジネスとしての余地や、社会的な意義もあると感じます。

教育未来創造会議には「Schoo」が必要


——政府機関の危機感を象徴する動きのひとつとして、2021年12月、
教育未来創造会議が設置されました。社会人の学び直しやデジタル人材の育成、奨学金制度の見直しといったところがアジェンダとなっていて、まさに、Schooが10年かけて取り組んできたことに直結しています。

教育未来創造会議の資料をみて、Schooが果たせる役割が相当あると直観しました。まずは一歩引いた立場から、順序を示すこと。「社会人の学び直しが進まない」という課題を解決していく際に、その変革の機会は大学にもあるし、企業にもあるし、国にもあるんですが、結局それを言い出したら「どこかがやるだろう」となって、何も変わらないでしょう。

じゃあ、どこが先に率先して変わっていくべきかと言えば、企業なんですよね。企業は今、「終身雇用はもう無理」という現実を受け入れて次の正解を考えていく必要があります。その次の正解に向けてルールを作っていくことが必要で、そうなると必然的に大学も受け入れが加速していくだろうし、国もそれに対するバックアップを行なっていくはず。

大事なのは、目標達成に向けた順番を示したり、その順番を想像した動きに併走したりということだと思います。私たちは社会人の教育コンテンツの提供者として、俯瞰して見られる立場にあるからこそ、全体を見渡して声を挙げていくことが重要だと思っています。

もうひとつは、高等教育機関と企業それぞれにコネクションがある立場として、双方の課題を理解し、解決策を客観的に提示していくということもできると思います。

イギリスではダイソンが政府に働きかけてルールを一緒に変えながら、ある大学と連携してダイソンの学校を作ったんです。そこに通う生徒たちは、ダイソンの職員として給与をもらって同社の研究開発を手伝いつつ、最先端テクノロジーについて、アカデミックな視点からビジネスの視点まで一貫して学べるという仕組みです。「学ぶための資金問題」の解決にもつながります。

この取り組みにおいて何が必要かと言えば、企業と大学、国・自治体が真の意味で繋がること。それぞれの立場を理解した上でデザインしていくということです。こうした横断した取り組みの中心に入っていく企業として、それぞれとの関係性を築いてきたSchooは機能していけると思っています。

経営が変わらなければ、学び直しは進まない


——人手不足で学びに時間を割くことが難しいという企業側の事情も、仕事と生活が忙しいなかでどう学ぶのかという個人の事情もあるかと思いますが、どんな変革が必要だと考えますか?

日本は1億2千万人の市場があって、国内だけでビジネスをしてもある程度の規模にまで成長できちゃうし、儲かったりするわけですよね。グローバル競争を考えなくても、まだ誤魔化せるんです。

でも、これからどんどん誤魔化せなくなっていくことは間違いありません。

それが5年後なのか、10年後なのか、20年はいけるのか……産業によっても差がありますが、「今の仕組みの延長線上だと、もうやばい」と思うタイミングが必ず訪れるはずです。

つまり、「何年先を見て経営しますか?」ということではないでしょうか。5年先しか見えていない経営者だったらそのXデーの5年前にしか気づくことができませんが、100年のスパンで執行できるような経営者だったら、もう随分前から動き出しています。

Schooが挑むのは社会全体のリテラシー向上


——社会人の学び直しへの追い風があるなかで、社会人向けオンライン学習の先駆者であるSchooとして、今後の役割はどこにあるのでしょうか?

一言で言うと、やはり「社会におけるリテラシーの底上げ」だと考えています。

おそらく100年後には、地球環境のことを考えずに会社経営をしたり、好きに消費活動をしながら生きていったりとはなっていません。

地球の状況を考えれば、みんなで環境問題に取り組んでいかざるを得ない。じゃあ、どこに向かって着地させるのか。そう考えたときに、目指す着地点が正しいのであれば着地のスピードを早めることができるかもしれないし、「そこじゃないでしょ!」となれば落ちるポイントを少しずらすことも可能なはずです。

もちろん、社会リテラシーの欠如や偏りによって、逆のことも起こり得る。だからこそ、今社会に求められているのは、正しいスピードで、正しい未来に向かっていくための社会全体のリテラシーコントロールなのではないかなと思います。

時代の流れとして、今後オンラインでの学びが一般化されていくことは間違いありません。そのときに、正しい未来に着地させられるか、その普及スピードを加速させられるかということを私たちは追求していかなければいけません。

———新規参入が激化しつつあるオンライン学習業界において、一番重要なのは社会的責任を埋め込んだサービスを作り続けていく、ということなのかもしれないですね。森社長が考えるSchooの「社会的責任」とはなんでしょう?

以前、「NHKの大河ドラマってすげえな!」って感動した経験があるんです。何がすごかったのかというと、そこに内包された歴史を学ばせてしまう力なんですよ。

昔親戚とご飯を食べていたときに、当時放映されていた『篤姫』の話を一生懸命してくれました。その人は決して勉強が好きな人ではなかったのですが、篤姫の歴史について熱く語るんです。

「勉強」として学んでいたときにはそれほど興味のなかった歴史が、大河ドラマというコンテンツを観ることによって楽しく学ぶことができた。そういう人はきっとたくさんいて、人類は広義の学びによって文化を継承していくんだなということを実感した瞬間だったんです。

私たちは、いろんな学習コンテンツをつくっていくなかで蓄積されていく文脈や思想、そしてそれによって提示される望ましい未来の方向性のようなものをこれからも追求していきたい。それが、未来を好転させるきっかけであり、Schooの役割だと信じて、進み続けたいですね。

株式会社Schoo(未来の日本をつくる取り組み)
http://corp.schoo.jp/creation/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する



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