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「人」ではなく「人類社会」を変革したい——その思いの背後にあった「失望」と「希望」

代表の森が「世の中から卒業をなくす」ことをミッションに掲げ、オンライン学習サービスを提供する「Schoo(スクー)」を立ち上げたのは2011年10月3日。それから11年の歳月が経ち、「リカレント教育」にも注目が集まり、2022年の流行語大賞にも「リスキリング」がノミネートされるなど、「学ぶ」ことへの社会の関心がいま、一気に高まっています。Schooが掲げてきたミッションはいよいよ、社会全体のミッションになりつつあるといっても過言ではないでしょう。

実はSchooには、このミッションに加え、「インターネット学習で人類を変革する」という大きなビジョンがあります。一見すると、「インターネット学習」と「人類の変革」はやや距離があるように感じるかもしれません。なぜ、森は人類を変えたいと思ったのか。そのツールがなぜインターネット学習だったのか。その背景にある思いを、改めて聞いていきます。

社会か人か。主目的はどちらを変えること?

——早速ですが、「インターネット学習で人類を変革する」というビジョンについて、改めてその背景にある森さんの思いを教えてください。

代表・森(以下、):そもそも、僕が人生の最終目標としているのは、社会の仕組みや構造を変えることなんです。今の社会に対して大きな苛立ちがあるからこそ、その仕組みや構造を変えるためには、まず「学び続けること」によって一人ひとりを変えていくことがベストなアプローチだろうと考えています。そのための手段として「インターネット学習」、という考え方で、Schooを運営してきました。

社内のメンバーや経営陣においてもミッション・ビジョンへの解釈はそれぞれ違っています。多くのメンバーは、おそらく社会の仕組みや構造を変えること自体への興味は小さく、一人の人生を学びでより幸せにすることや、学ぶことが好き・学びという行為に興味があるという思いのほうが強いんじゃないかなと思うんです。実際、「インターネット学習で人類を変革する」というビジョンに対しても、創業社長の僕自身の考え方が後者であるという前提のもとで解釈してもらっているケースが多いように感じてきました。

「社会構造の変革」か「学びによって1人の人生をより幸せにすること」か。
この会社においてはどちらの想いを持つ人も正しい。ただこの先の10年において会社が取り組もうとしていることを考えると、両方のタイプの人が必要だし、どちらのタイプであっても両方の意義について理解していく必要があると考えています。

——以前のインタビューで、「日本のすべての人たちの学びの底上げに貢献していきたい」というお話をされていました。イノベーションを起こすためには、「一般市民のデジタルリテラシーがイノベーションの発想を受け止められる状態にあること」が重要だともおっしゃっています。そもそも「学ぶ」ということと「変革を起こす」ということに対して、森さんには強い思いがあるのではないかと感じますが、その思いを抱くに至るまでに、何か原体験となるような出来事があったのでしょうか?

森:オンライン学習を事業にしようと考えたのは、社会人になってからなんですが、社会を変えたいという思いをもつようになった最初のきっかけは、5歳の時だったと思います。

僕が5歳の頃、両親は離婚しました。あまり家庭環境が良いとは言えない状況で、あるとき家族の危険を感じたときに、子どもながらに無我夢中で同じマンションに住んでいる人たちに助けを求めに行きました。でも、誰も助けてくれなかった。自分は助けを求めるために行動したのに、みんな遠巻きに見ているだけ。数十年くらい前の話なので、当時はまだDVとか虐待について、「家庭の問題だから」と警察すら積極的には介入してくれない時代でした。

「困っている人がいたら助ける」って、日本ではみんな自然と身につけていく倫理観だと思うんですけど、最後のところで助けてくれなかった世の中に、「関わらないほうが身のため」と思って見て見ぬフリをさせてしまう社会の構造に、失望しましたし、怒りを覚えました。あの瞬間に、「最後は自分の力でなんとかするしかないんだ」と、人に期待することをやめた気がします。

——社会や人に対しての失望が、諦めではなく「変革すればいい」という方向に向いたのには、何か理由があったのでしょうか?

森:ひとつは、母親が4歳下の弟と僕に対して一生懸命教育をしてくれたということはとても大きいと思っています。過去に起きたことも肯定しながら、ひとりで必死に働いて、私立小学校に通わせ、本もたくさん買ってくれました。おかげで、小学生の頃の僕の夢は、「総理大臣になること」だったんです。

それからもうひとつ、ここ10年、15年の間にDVや虐待のような家庭内の問題をはじめ、社会の問題に対して世間が「良くない」と声をあげる風潮が出てきて、ルールが変わったり、警察やほかの支援団体などが結局的に介入したりするようになったことも大きいですね。数十年前はそうじゃなかったけど、社会の仕組みや構造って変わるんだなって思ったことが、今の自分の思想に影響していると思います。

もう少し早く変わっていれば、きっと僕は失望しなくて済んでいたかもしれない。だとしたら、社会の仕組みや構造をもっと早く最適解に近づけていくためには何ができるんだろうと考えるようになったんです。

根底にあり続けた「社会を変えたい」という思い

——森さんの社会人としての最初の経歴は、リクルートコミュニケーションズですね。「社会」というよりは「人」にフォーカスを当てているのかと思う方が多いのは、リクルート=人材系事業というイメージもあるのかなと思います。「社会を変える」という思いを抱えていた森さんが、リクルート系企業を選んだ理由とは何だったのでしょうか?

森:実はそこも僕の中では一貫していて、「人」に関わる仕事がしたかったというよりは、「社会に対して大きなインパクトを与えられる会社」という視点で就職活動をしていた結果だったんです。

もともとは総合商社を志望していたんですが全然通らなくて、この時に気づいたんですよ。「ああ、これは学歴カットだな」と。だとしたらそんな会社に運良く入社できたとしても、末端の兵卒として使われて終わるかもしれない。学歴とか関係なく、「社会に対して変化を誘発できる何かを発信できる仕事」は何かと考えた時に、クリエイティブ職だなと思ったんです。

それで社会に対して大きなインパクトを与えられる会社であり、クリエイティブな仕事ができる職種にと考えた結果、辿り着いたのがリクルートコミュニケーションズでした。なのであくまでも目的は「社会」を変えることだったんですよね。

——社会を変えるという目的がビジネスと結びついたのは、いつ頃でしたか?

森:それはたぶん、幼い頃からずっと根底にはあったと思います。小学校の卒業文集にも、将来の夢は「総理大臣になりたい」って書いてあるんです。しかもその文集の表紙には国会議事堂の絵をつけたりしてて。子どもの頃は漠然と、総理大臣になればこの社会を変えられると思ってたんでしょうね。

両親の離婚後、僕が中学2年生の時に母親が再婚するまで、決して精神的に楽だったわけではありません。通っていた学校に馴染めなかった時期もあるし、子どもなりに社会の理不尽さのようなものを感じていたんだと思います。誰かが正しい方向に変化させなければならないし、それは自分がやるんだという気持ちはずっともっていましたね。

——森さんは一貫して、ご自身の体験と重ね合わせて同じような思いをする子どもたちを助けたいというよりも、そういう人たちを助けてくれない社会を変えたいと思い続けてきているんですね。

森:僕にとってはやっぱり、家庭環境がどうだったかということよりも、助けを求めたのに拒絶されたということのほうがとても強烈に残っているんですよね。だから自分のような人を助けたいとかっていうよりも、あえてストレートにいうと、困っている人を見て助けられない人たちに対して「間違っているな」っていう怒りのほうが大きい。

そこでもし、誰かにしっかり助けてもらっていたとしたら、自分もそういう人になりたい、困っている人を助けられる人になりたい、と思っていたのかもしれないですが、現実はそうじゃなかったんですよね。だから、「誰かがこの世の中の歪さを変えなくてはならない」という想いのほうが、根底に深く残っているんだと思います。

——そうした思いを抱えながら、そのソリューションとして「学び」「オンライン学習」というところに行き着いたのは、どういった経緯だったのでしょうか?

森:そこは本当に偶然だった気がします。Schooを創業したきっかけは、社会人2年目の終わり頃に受けたオンライン研修が面白くなくて、当時「ニコニコ動画」が好きでよく見ていたこともあって、もっと面白いものにできないかなと思ったことだったんです。

ただ、事業を始めた結果、いろいろな「学び」に接して事業を多角化していくうちに、不思議と自分の原体験にもつながっていったように思います。例えば、高等教育機関や地方へのアプローチは社会全体のリテラシーの底上げにつながる部分ですし、中央省庁と連携した授業を行うのも社会を変革していく上で、この国のシステムそのものを理解するという重要な役割を担っていけるはずです。

なので本質的なところでいうと、僕個人がSchooを通して達成したいのは「人類社会を変革する」というところであって、教育をすることがゴールではないんです。誰かひとりを学びによって幸せにしても、びっくりするぐらい不幸せな人もいっぱいいるし不条理の中ですごく苦しむ人もいるわけで。基本的にはそのすべての人がもう今よりももう一段良くなるためには、社会の仕組みや構造自体を変えていかないと考えています。

変化を起こすスピードを上げるために「学び」を

——2022年は、創業から10年が経ち、また次の10年に向けた計画も発表しています。今見えているゴールについて、教えてください。

森: 会社として目指している最終ゴール地点はやはり、すべての人たちが学び続けている状態=世の中から卒業をなくすことだと思います。結局のところ、自分が原体験で感じたような歪さについても、その問題が解決したところで、また新しい問題が社会にはいろいろと出てくるわけですよね。社会全体の問題がオールクリア、つまり誰ひとりとして問題を抱えていない状態というのは不可能だし、今日の正解が明日の正解じゃない。重要なことは、社会全体が課題解決のための変化に対するスピードとか耐性を上げていくことだと思うので、学び続けることが当たり前の社会をつくることしか解はないと思うんです。

変化が起ころうとしている時、変化を自ら作り出すための武器としての知が必要ですし、受け止める側にはその変化が正しいものなのかを見極めるリテラシーが必要です。人類社会全体で正しい変化を選択し社会実装していくためには、変化を起こす側の人と周囲の人の双方に最新のリテラシーと高い視座・広い視野が必要です。

世の中から卒業をなくし、人類社会を変革する。
目指すところは高いですが、そのプロセスにおいてたくさん人を幸せにできる意義を持った会社だと心から信じています。
「社会構造を変革したい人」、「学びによって1人の人生を変えたい人」。どちらの人も受け入れながら、引き続き前に進んでいきます。


■株式会社Schoo

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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