
「社会人教育×地域創生」上場したSchooの新たな成長戦略とは-2025年CEOインタビュー
2024年10月22日の上場から約4ヶ月が経った株式会社Schoo(スクー)。
労働人口減少という巨大な社会課題に対し、解決策としての「社会人教育」への期待も相まって、株式市場からの関心が高まっていることを感じます。
さらに先日2月4日には、移住転職コミュニティ『LoLLL(ロール)』をリリース。地域創生と社会人教育。一見、結びつかないようにもとれる2つの事業領域がどう並び立つのか。
「地域創生は単なる社会貢献ではなく、大きな事業機会であり、ミッション実現と社会人教育事業の更なる成長のためにも必要な営みだ」と語る代表の森健志郎に、その真意を聞きました。
社会人教育事業のさらなる加速
2025年は株式会社Schooがパブリックな存在となって最初の1年です。国策として引き続き「人への投資」が掲げられ、社会人教育市場の環境は今後も良好であると予測しています。
特に人的資本経営への注力を表明する大企業は日に日に増えており、企業の「学び」に対する考え方が、大きく転換するタイミングを迎えています。
少子高齢化が進む中で、従来のように採用費だけを投じて人材を確保し、終身雇用を前提とした自社で活躍するためだけの教育を行う人材戦略が立ち行かなくなってきているためです。
中でもデジタル人材は数が圧倒的に不足しており、人材紹介会社への手数料を倍に設定しても採用が難しい。入社後も流動化が進み、新卒も中途も辞めやすくなる状況の中で、一人ひとりの従業員に向き合った能力とキャリアオーナーシップの開発、つまり「大人が学び続けること」に企業が自分ごととして向かいあう必然性が増しています。
このような社会変化への対応に迫られている大企業と伴走するため、従来の営業チームとは別動隊となる組織「ソリューション企画チーム」を設置しました。顧客の人的資本戦略や人材育成の課題に対し、プロジェクト形式で深く関与しながら弊社の法人向けサービス『Schoo for Business』の活用と課題解決を進めるチームです。
具体的には、日本を代表するような大企業に対して『Schoo for Business』の全社導入を推進すること、今のサービスでは解決しきれない問題に対応するオプションサービスを開発し提供すること、各社の人事戦略に紐づく学習コミュニティの運用支援といった顧客伴走を行っています。

2024年9月に利用数が40,000件を突破した『DXスキル診断』をはじめ、顧客の声を深く聞かせていただくからこそ生みだせる機能開発も積極的に実施しています。IRでお伝えしている成長戦略の通り、この組織で取り組む挑戦は足元の業績成長を左右する重要な役割を担っています。
また弊社の競争優位性は法人向けサービスだけでなく、個人向けサービス『Schoo for Personal』を並行運用していることから生まれています。
企業から与えられた研修というシチュエーションではなく、自分の意志で何かを学びはじめようとするとき、人はどんな体験と感動を求めるのか。すべての人が学び続けなくてはならない時代において、徹底した顧客視点を持ち続けることは何よりも重要です。『Schoo for Personal』を通してエンドユーザー目線のコンテンツやプロダクト開発を続けることを、今後も大切にしていきます。

市場を見渡すと、残念ながら、公的な給付金制度にしてもリスキリングサービスにしても、「学ぶことが得意な人」に向けられたものが多く見られます。学びの成功体験を持たない人のこともしっかりと受け止める社会システムをもっと提案していくことが必要です。
創業以来掲げてきた「世の中から卒業をなくす」というミッション実現のために、社会人教育市場のカテゴリーリーダーとして、これからも変わらずあらゆる手を尽くし、「すべての人が学び続ける社会づくり」に取り組んでいきます。

地域に立脚した新たな成長戦略の本格化
昨年2024年末、新内閣が「地方創生2.0」を掲げ、日本列島改造を打ち出すなど、地域創生は2025年の最重要キーワードになっていくと考えられます。
スクーは、この流れに乗るというより、むしろこの瞬間を待ち続けてきました。
2015年から始まった地方自治体との提携施策、2021年の奄美大島との包括協定、2023年の九州熊本オフィス開設など、今回のようなムーブメントが起きたときに、地域から起こるであろう社会変革に加わるための準備を整えてきたのです。
これから国策としてさらに強い「東京一極集中の打破」となる施策が実施されることで、都市部の企業だけでなく、地域企業・地方自治体や地方大学などがますます鍵となり、日本全体で人的資本モデルを再検討していく流れが生まれていくでしょう。我々はここに対してリソースをしっかりと投入し、事業成長と社会変革を実現していきます。
改めて重要なのは、地域創生への取り組みが、弊社にとって単なる社会貢献に留まるのではなく「大きな事業機会」だということです。都市部の事業で稼いで地域へ社会貢献という構えで挑んでいるようでは、この国を変えていくことはできません。
これらの背景をとらえながら、地域創生領域への取組の1つとして、2025年2月から移住転職サービス『LoLLL(ロール)』を新たにスタートしました。都市部の人材と地域のよい企業を正しくマッチングしていくコミュニティサービスです。
これにより、我々は人材ビジネス市場へもアクセスできる企業体となりました。日本国内の企業研修市場は約4,000億円の規模ですが、私たちが今回参入する人材ビジネス市場は約10兆円規模。しかもこれは既存の市場規模であり、地域創生という文脈で新しい価値を提供できればさらに大きな市場を創造できる可能性があります。地域企業や地方自治体へ『LoLLL』を通じて新しい仲間をマッチングしていくだけでなく、弊社が得意とする人材育成も高度に組み合わせて担うことで、地域が抱える人の問題を深く解決できる独自の存在になりえる。
「社会人教育」と「人材ビジネス」。この2つを、今の社会背景をとらえた上で掛け合わせることで、当社の現在の事業規模を大きく超える成長機会を見出していくことが可能だと考えています。
そもそも私は、日本が少子高齢化という難局を乗り越え、いずれ同じ課題に立ち向かう諸外国の光となる方策は、地域にあるものを解き放っていくことでしかないと考えています。自然、食、景観、文化、人、企業、産業、そして想い。都市部が無理な急成長と合理性の中で捨て去ってしまった「本当は大切だったもの」がたくさん残っているのに知られていない。2015年からたくさんの地域を訪れるなかで、いろんな人と場所にそれを教えていただきました。
日本として地域の可能性を国家戦略の中枢に組み込んでいない状態が、今の日本の停滞を生んでいる。この大きな機会損失を打破できるチャンスがようやく訪れていますし、スクーもその一翼を大きな存在として担えるよう事業展開を加速していきます。

日本を代表する社会的インパクトを目指して
2024年9月、全社ビジョンを「『あたたかい革命』が起こり続ける社会を残す」に刷新しました。これは創業以来掲げてきた「世の中から卒業をなくす」というミッションの目的地を、より明確に示したものです。オンライン教育の会社ではなく、それを起点として、次の世代に残すべき未来をつくりだす会社であろうと。
2025年はその道のりで生み出していくべき「社会的インパクト」をより言語化して多くのステークホルダーに伝えていくことを目指します。
『LoLLL』のように大きな社会性をとらえた新規事業をつくることにも取り組んでいますが、今まで我々が積み上げてきた『Schoo』というサービスが生む社会的インパクトを改めて言語化したり、様々なクリエイティブへ落とし込んだりすることに挑んでいます。このプロセスで『Schoo』自体がもう一度今の時代に合わせた新たな概念となり、社会運動へと昇華していくことを目指します。
今後、AIをはじめとするテクノロジーが大きなインパクトを生み出し、世界情勢は大きな変化を続け、結果として多種多様なシナリオが予測されます。10年後を解像度高く予測するのは卓越した専門家でも難しい。
一方、スクーは、マーケットの動向予測が立ったタイミングで競争していく「狩猟型」ではなく、いつ起こるかわからないけれど、遠い未来のどこかで必ず起きて、そのときにすごく大きな価値を帯びるマーケットに対して長く張り込む「農耕型」のアプローチを得意としています。今、社会人教育のリーディングカンパニーに成りえているのは、まだ誰もが市場を信じ切れていなかった14年前から、農耕型で試行錯誤を続けてきたからです。
社会も私たちの事業も挑むべき問いは山積みですが、世の中がどう動こうが目指す場所は変わりません。僕たちの子供や孫の世代へ向けて、「この社会はきっとよくなる」と信じ続けられる理由を増やしていかなければいけません。そのために我々がつくろうとしている社会的インパクトについて着実にご理解いただき、長く、力強く応援し続けてもらえる会社を目指していきたいと思います。
2025年もきっとたくさんの挑戦を世に出していきます。皆様の応援あってこその挑戦、受け止めてくれる時代あってこその革命です。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

■株式会社Schooについて
MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:「あたたかい革命」が起こり続ける社会を残す
私たちが暮らすこの社会は、多くの人々が生んだ発明、努力、願いによってつくられました。ですが、少子高齢化という揺るぎない流れが、今の社会システムに留まることを許さず、たくさんの劇的な変化を私たちに要求しています。「誰かを想い、何かを変えるために頑張ること」。それが私たちの定義する「あたたかい革命」です。学びを通じた新しいつながりを編み、しがらみや壁を取り払って、社会課題を解く様々なイノベーションを生み出すこと。私たちの子供やその先の世代に「未来はきっと良くなる」と信じ続けられる社会を残すことを目指しています。