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学びを起点に少子高齢時代の「次の社会の在り方」を追究する

コロナ以降のデジタル化の加速で、オンライン学習は追い風を受け、2023年にはリスキリングや人への投資が国の「骨太の方針」に明記されるなど、社会人学習がこれまでになく注目を集めるようになっています。

創業から「世の中から卒業をなくす」を掲げ、社会人の学びを追求してきたスクーは、この波をどう捉え、この先10年をどう描くのか。代表の森健志郎に聞きました。

リスキリングブームをどうみるか

「世の中から卒業をなくす」という使命を掲げ、学び続ける社会をつくりたいというのは、創業からずっと思ってきたことです。

起業して社会人教育市場に参入し、いろんな人と対話をしたり調べたりするうちに、社会人教育が国策としても社会の流れとしても、重要になる時代が来るだろうと確信するようになりました。そこから約10年経って今、国がリスキリングを掲げ、社会的な流れが生まれていることは、想定内でもあるし、喜ばしくもあります。

ただ、よくない意味で予感が当たったことも2つあります。

一つは、リスキリングや学び直しを推進する制度が「学ぶことが得意な人」に向けたものであること。 もう一つは、危機感に迫られて動き出したものの、他国と比較して本腰を入れるタイミングが大きく遅れたことです。

「学びの制度」が陥りがちな穴

公的な給付金制度にしても、リスキリングブームで市場参入しているサービスにしても「学ぶことが得意な人」がルールをつくり、運用する仕組みになっている。学歴偏重主義の延長でつくった制度は、学びの成功体験を持たない人のことを受け止めづらいと考えています。

例えば受験勉強を一生懸命頑張って、自分の希望する進路を獲得したり、夢がかなったりという成功体験を持っている人。そんな人は学ぶこと自体が好きですし、学びは努力に報いてくれると信じています。

一方、勉強を頑張ったけれど第一志望校に受からなかったり、学生時代に学ぶことを嫌いになってしまったり、家庭の事情で進学すら選択できなかったりした人もいます。むしろ日本社会においてはこちらが多数派です。

国のルールやリスキリングサービスを作っている人たちの多くは、「学ぶことが得意な人」です。学習の成功体験や好きな気持ちがあるからこそ「一生懸命学べば、その努力に対する対価が返ってくる」は全ての人に通用する、と信じているところがある。

もちろん、それ自体が悪いことでは全くありません。ただし、実は学びの成功体験を持たない大多数の人にとっては「頑張って学ぶことがすごく苦痛なプロセス」であるということ。そして(現行のリスキリングをめぐる制度は)それに寄り添おうとはしているけれど、フィットはしていないものになっていると感じています。

「学ぼう」を主体には限界がある

学ぶこと自体にそれほど興味や、特別な成功体験のない多くの人たちに対して「学び続けることは当たり前」「学ぶといいことがあるから学びましょう」を主体にしてしまうと、どうしても限界があります。

学びという共通の目的はゆるやかに持ちつつも、まずは他者や仲間との「出会い」や「コミュニティに属すること」を楽しむ。そこが始まりとなって、続けていく中で学びが身近と積み重なり、目の前の仕事や生活が少しずつ変わるー。その体験を積み重ねていくことが大切だと思っています。

そんな経験を経て初めて「学ぶってなんとなく苦手だったけど、いいものだな」にたどり着く。学ぶことの敷居を下げて、たくさんの人を受け止めていく仕組みやプロセスが、今のリスキリング施策には足りていません。 

リスキリングブームは遅かった

経済において、人口動態は普遍的で抗えない指標です。就労人口がどう推移するのかは予測がつくし、それに生産性を掛け算すれば、ある程度その国の生産出力が決まり、それが産業ごとの市場に降りてくる。その上で、日本が少子高齢社会になることは、ずっと前から誰も疑っていなかったわけです。

このトレンドを踏まえると、働く人たちの生産性やパフォーマンスを高めていかなければ、社会全体が今の生活を維持することすら難しくなります。働く人たちのパフォーマンスを高めていく選択肢の一つとして、大人になっても学び直す機会の提供は極めて有力です。

だったら当然、そのマーケットに対して国費が投入され、もっと大きな市場形成がなされていくだろうと考えました。だからこそ13年も前から先んじて会社を続けてきたわけですが、少子高齢化がわかりきっていた割には、国をあげて今の波をつくる判断が遅かったと思います。

学び以外のアプローチは何か

社会人教育市場を通じて、少子高齢社会が生む歪みを理解していく中で、もっと高い視座で社会が向かう未来を変えていきたい。そう考えるようになりました。すべての人が学び続けること、リスキリングによって一人ひとりの生産性やパフォーマンスを高めていくことに留まらず、それらも含めた「少子高齢社会で生きる人たちがもっと幸せにあれる、今の延長線ではない新しい社会」を作りたいと。

故にSchooでは既存事業である社会人教育やリスキリングだけでなく、地方創生、移民問題、高等教育機関のトランスフォーメーションというテーマを研究対象とし、新規事業の検討と開発を進めています。

これらに通底するのは、少子高齢化が進んだ先にある「次の社会の在り方」をつくり出すために避けられないビッグテーマであること。それぞれが実は隣接しており、祖業である社会人教育事業とのシナジーが大きいこと。時間軸こそ読み切れないものの、リスキリングのようにいずれ国をあげての大改革が起こると確信していること、です。

イノベーションの役割とは

2024年初に起きた石川県能登半島地震では、高齢者の多い過疎地域では「復興ではなく移住を進めるべきでは」という議論がネットを中心に巻き起こりました。社会に対して効率や投資対効果を最初に持ち出すと、「傷んだ地域は捨てて移住すればいい」という声が「いかにも合理的な指摘」として上がりますし、否定がしにくくなります。

しかしこれは、あるべき主従が逆転している。

本来、全ての人が自分らしく生きられるように政治があり、社会システムがあり、従ずる税制度や公的インフラなどがあるべきだと僕は考えます。「サポートが追いつかないからそういう生き方は、あきらめてね」という主張で、課題解決や創造を放棄してしまうなら、なんのための公共でしょうか。

自分たちが住んでいた土地を捨てたくない、ここで暮らしたいと思う人たちがいる。一方、人口減少社会で、どうやってインフラや社会を維持していくのかと悩んでいる「中央」の人たちもいる。

だったらその双方の立場に立脚して知恵を絞ることこそが、イノベーションであり、企業にこれから求められる役割ではないでしょうか。

地方と中央をつなぐ人格

経済的な中央である東京からの「重力」があって、それによって産業も行政も意思決定も引っ張られている時代にこそ、「(東京に対して)その他」に分類される様々な地域の個性をもっと見つめ直すことが重要ですし、問われ始めています。 

東京に会社の拠点を置いて、市場のど真ん中からお金と情報にアクセスしながら、地方の持つ天然資源や文化資本といった「独自資産」を結びつける。Schooは「両方をつなぐ存在」でありたいと思っています。

これを推し進めた先にあるアウトプットこそが、Schooが提供していく社会人教育やリスキリング、地方創生、移民問題、高等教育機関のトランスフォーメーションーーといった事業ポートフォリオの成長と拡大です。我々の事業成長は、社会に果たす影響力の拡大と極めて高く相関していきます。

スクーが提示する第3の生き方

スクーは2023年に熊本市にサテライトオフィスを置き、九州地域へ足場をつくりました。定期的に足を運び、地元の学生や企業、自治体の方と対話することが増えています。

地方にも優秀な学生たちがいるのですが、話してみると、(就職先に)地銀と県庁の二択という選択肢しか持っていない人も多い。スタートアップという概念も情報もほとんどない。

一方、東京圏の大学に通う学生は、起業家や経営者に接する機会がどんどん増えています。起業することが一般化し、自分の友達がスタートアップに関わっていることが、珍しくなくなっている。周囲に在学中から起業している知人がいたら「自分でもできるかな」と自然に思うでしょう。

コミュニティとそこで流通してる知恵や価値観みたいなものって、その人の選択肢を劇的に広げます。 スクーとしてずっと追求してきたコミュニティや「みんなで価値」を地域でも機能させていくことで、未だ眠っている価値や知恵を解き放ちたい。どうしたらいいか悶々と日々を過ごしている時に、「実はこういう方法がある」「生き方も周囲も工夫次第で変えられる」と気づくことって、すごく大切です。それが全ての新しいことが生まれる原点であり、学びにはそれを促し、繋げる力があるからです。

総じて、少子高齢化による急激な人口減少社会では、生きる人たちの価値観と社会システムの再構築が必要です。学ぶことにより別の視点が生まれるアンラーニング、そしてスクーが追求してきた「他者との関係性」や「コミュニティ」。これらは価値観の改革と社会の再構築に、大きく寄与すると思っています。

地方と中央の対立構造で考えるのではない、双方を行き来できるようなオルタナティブな社会の在り方、人口縮小時代により幸せに生きられる「第3の生き方」があるはずです。

社会人教育からスタートしたスタートアップであり、学びをただ「学び」ではなく、コミュニティや「みんなで価値」を入り口に提供してきたスクーだからこそ、その「第3の生き方」を、提示できると思っていますし、提示することが使命であると考えています。

僕たちは、「社会人教育の会社」で終わっていい会社ではありません。

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