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スクーが作るのは「学びではない」と宣言する理由|Schooレポート vol.5

Schoo エバンジェリスト 滝川麻衣子


エンゲージメント高める「学び合い」

みなさんの職場には、定期的な勉強会や実務とは別の社内活動など「学びのコミュニティ」はありますか。それとも職場の人と仕事以外でもつながるなんて、気が重いでしょうか。

けれどもし、あなたがマネージャーや経営者で、組織の離職や活気のなさに悩んでいたら。管理職などではなくても「何か職場に愛着が持てないな…」と思っているとしたらー。「学び合いの場をつくる」というのはひとつ有効かもしれません。

スクーが2024年8月に全国のビジネスパーソンおよび人事担当者に行ったインターネット調査(近日リンク公開)によると、個人の学習機会と合わせて企業内大学などの「学び合い」の場を用意していたり、検討中だったりする企業で働く人の方が、そうでない企業で働く人よりも、仕事への意欲や仕事の充実度合い(ワークエンゲージメント)の高いことが明らかになりました。

スクーによるビジネスパーソンおよび人事担当者に行ったインターネット調査より

・「仕事への意欲が高い」社員の割合は、学び合いの仕組みや制度が「ある企業」所属では83%に対し、「ない企業」所属の社員は67%
・ワークエンゲージメントについても、学び合いの仕組みや制度がある企業所属では81%に対し、ない企業所属の社員は57%

スクーによるビジネスパーソンおよび人事担当者に行ったインターネット調査より

上記のとおり、いずれも大きなひらきがあります。

もちろん、これは当然に感じるかもしれません。企業内大学が組織的に設置されたり、勉強会が活発に開催されたりするような職場であれば、社内に交流や活気があって、働く人も意欲や充実感をもっていることは、容易に想像できますね。

かたや、目の前の業績目標以外の会話や交流がない職場だと、会社への愛着や手応えが落ちていくことは、まったくもって不思議ではありません。

学びと人間関係は切ってもきれない

「なぜ人は自主的に学ばないのか 学びに向かわせない組織の考察」(リクルートワークス研究所)

筆者が2023年にプロジェクトメンバーとして参加した、リクルートワークス研究所の「学びに向かわせない組織の考察」研究プロジェクトでも、学びとキャリアについて調べています(1771名対象のインターネットモニター調査)。

その結果、「職場の同僚と相互に刺激を与え合いながら成長する環境を築いている」「私の職場では仕事に関して学んでいる人が多い」と回答した職場環境は「仕事に直結する学び」「キャリア形成に関する学び」に影響を与えていることが、相関性の分析により明らかになりました。

▼リクルートワークス研究所の「学びに向かわせない組織の考察」研究プロジェクト
https://www.works-i.com/research/report/item/learninitiative.pdf

2つの調査からも、人と人との関係性や「組織」と、学びという行動には切っても切れないつながりがあるようです。

プロティアンキャリアと「関係性」の話

スクーの授業紹介ページより

コミュニティや他者との関係性を重視した学びが、なぜ個々人や組織に良い影響をもたらすのかー。これについて、ヒントになる考え方を、キャリア学の観点から示しているのが「プロティアンキャリア」を提唱する、タナケン先生こと法政大学の田中研之輔教授です。

スクーでもキャリアの授業でお馴染みのタナケン先生は、ボストン大学経営大学院教授のダグラス・ホール氏の提唱する「社会や環境の変化に応じて柔軟に変わることのできる変化自在なキャリア」であるところの「プロティアンキャリア」の考え方に、「キャリア資本」という観点を加えています。

注釈)キャリア資本は、イギリスの経済学者リンダ・グラットン氏らが提唱する「無形資産」と、社会学者ピエール・ブルデュー氏の「資本論」を、タナケン先生が組み合わせた概念。

田中研之輔、『プロティアン』、日経BPより

その上でタナケン先生は「キャリア」を生涯を通じて学び続けることで蓄積される「資本の総体」として捉えることで、「どんなキャリア資本を形成するかを戦略的にマネジメントすることができる」と提唱されています(田中研之輔、『プロティアン』、日経BP)。

ここでいうキャリア資本を戦略的・計画的に蓄積する思考法こそが「プロティアンキャリアの形成術」というわけです。

このキャリア資本にもまた「関係性やつながりがもたらす価値」が描かれているので、少し見てみましょう。

社会関係資本はキャリアの柱

田中研之輔先生の提唱する「キャリア資本」を筆者が図式化


キャリア資本の内訳として次の3つが定義されているのですが、本コラムにおいて注目するのは2つ目の社会関係資本です。

1)ビジネス資本…スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴などの資本
2)社会関係資本…職場、友人、地域などでの持続的なネットワークによる資本
3)経済資本…金銭、財産、株式、不動産などの経済的な資本
(出典:田中研之輔、『プロティアン』、日経BP)

経済資本/ビジネス資本に加えて、人と人とのネットワーク資本である「社会関係資本」が一つの柱であるというのは、信頼や結びつき、ネットワークの集積が、いかにビジネスパーソンにとって大切で、キャリア=人生において重要な要素であるかを物語っていますね。

この考えをもってすると、冒頭の「学び合う仕組みや制度のある組織で働く人のエンゲージメントや充実度が高い」という調査結果は、まさに「学び合い」によって「社会関係資本」が蓄積され職場のネットワークが積み上がっていくことで、個人のみならず職場(組織)にもプラスの効果がもたらされている…と言えるのではないでしょうか。

学びではなく学びを通じた新しいつながり

ところでみなさんはスクーを何の会社だと思われますか。

コロナ後にブームになったリスキリング、授業のライブ配信、法人研修など、イメージされるものは「学び」や「教育」である人が大半ではないでしょうか。

もちろんスクーの事業概要が「大人の学び」であることは、周知の通りです。ただそんな中、スクーは2024年9月、コーポレートサイトを新しくしました。そこでは実はこんなコピーを展開しています。

「学び」ではなく、「学びを通した新しいつながり」を作っています。

スクーのコーポレートサイトより

あえて「学び」ではなく「学びを通した新しいつながり」とした理由について、代表の森健志郎のこの言葉をご紹介させてください。

会社の成り立ちをさかのぼると、そもそも創業の2012年当時から、教育ビジネスをやろうとか、スタートアップぽくあろうとか、ほとんど思っていなかったのです。
当時、僕はニコニコ動画がすごく好きでした。スクーというサービスも、(ニコニコ動画のように)みんなでコミュニティの中で動画を見ながらやり取りをしていく体験がすごく面白いな、というところから始まっています。
オンラインでみんなで繋がり合いながら学び、その学びを通してまた繋がることに価値を見出したことが原点です。 

スクー社長、森健志郎のVISIONのnoteより

社会人の学びの会社がつくっているものを、あえて「学び」ではなく「学びを通した新しいつながり」としたのは、節目の年である2024年に、この原点を大切にしながら前進しようという思いがあります。

終わらない学び合いの場へようこそ

実際にスクーのサービスは、創業ビジネスの個人ユーザー向けの生放送、法人向けの集合学習、集中的にチームで学ぶゼミ、企業内大学支援など「みんなで学ぶ」を起点に、つながりを重視していることがベースのコンセプトにあります。

この「つながり」こそが本コラムで見てきた通り、組織へのエンゲージメントを高めたり相互成長を促したり、キャリア資本を豊かにしていくと考えているのです。

スクーの社名はSchool(学校)から最後のLをとって「終わらない学び」を表しているのはご存知でしょうか。そして、学校こそが「学び合いの場」であったことは古今東西、歴史が示していますね。

資格をとったり、集中して暗記したりするには一人の勉強は最適かもしれません。ただし、学び続けるためには、誰かとのつながりや居場所こそが、大きな力を発揮すると、私たちスクーは信じています。さらにそのつながりや居場所がまた、組織やコミュニティに活力をもたらすというサイクルこそが目指すところです。

学びを通したつながりに、ぜひみなさんも参加してみてください。


■株式会社Schoo

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:「あたたかい革命」が起こり続ける社会を残す
私たちが暮らすこの社会は、多くの人々が生んだ発明、努力、願いによってつくられました。ですが、少子高齢化という揺るぎない流れが、今の社会システムに留まることを許さず、たくさんの劇的な変化を私たちに要求しています。「誰かを想い、何かを変えるために頑張ること」。それが私たちの定義する「あたたかい革命」です。学びを通じた新しいつながりを編み、しがらみや壁を取り払って、社会課題を解く様々なイノベーションを生み出すこと。私たちの子供やその先の世代に「未来はきっと良くなる」と信じ続けられる社会を残すことを目指しています。

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