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2024年、社会人の学びで押さえたい「3つのトレンド」 | Schooレポート vol.1

Schoo エバンジェリスト 滝川麻衣子

「今、何を学ぶべきか」は、社会人教育サービスの会社で働いていると、聞かれやすい質問です。真面目に答えれば、「人によって違う」というのが本当のところ。その人の職域や得意分野、人生のフェーズによって、向き不向きも変わるでしょう。しかしながら、学んだことを活かす機会や仕事のニーズを考えるなら、やはり社会の動きやテクノロジーのトレンドを無視はできません。

その意味で、2023年の学習コンテンツのトレンドは、生成AIに始まり、生成AIで終わったと言っても過言ではありませんでした。ChatGPTがテレビのワイドショーでも取り上げられるなど、かつてない関心の高まりを見せました。

それでは、幕を開けたばかりの2024年は、何が注目を集め、どんな年になるでしょうか。先行き不透明の時代ではありますが、昨年からの話題の流れ、社会的な事象や実際のサービスの利用動向から「社会人の学びのトレンド」を見通してみたいと思います。


⒈ 生成AIが仕事仲間に

今年の「学びの分野」のトレンドを3つに絞って予測すると、一つ目はやはり、引き続き生成AIです。

年始早々に、アメリカ・ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市CESの様子を報じるニュースも、生成AI埋め尽くしていましたが、もはやビジネスに生成AIは不可欠であり、この流れは不可逆であるというのが、世界的なコンセンサスになった感があります。

前述の通り2023年、生成AIの話題急上昇は目覚ましいものがありました。そこに「話題から実装へ」「触ってみるから使いこなすへ」というシフトが、2024年の潮流になりそうです。

その一例として、ChatGPTの生みの親、OpenAIがリリースした、ChatGPT上でオリジナルのAIチャットボットを自作できるGPTsがあります。こちらはChatGPT有料ユーザー限定。「ビジネスメールを作ってくれるGPT」「バナー画像を作ってくれるGPT」「論文検索をしてくれるGPT」など、カスタマイズして構築することができるのです。

無料版のChatGPTと「おしゃべりしてみる」フェーズを過ぎ、よりビジネス現場の実用に生成AIが入り込んでくる段階になったことが、実感されます。

弊社Schooが365日配信している「生放送」授業でも、1月15日にその使い方を取り上げたところ、通常の倍以上に相当する人数の方が視聴する盛況ぶりとなりました。

実際、マッキンゼー&カンパニーやアクセンチュアなど大手戦略コンサルが業務支援やオリジナル生成AIを活用したり、サイバーエージェントがChatGPTを用いたウェブ広告のオペレーション変革室を立ち上げたりが、話題になりました。

大手企業に限らず、そこと取引する数多のビジネスの現場で、生成AIが「話題のツール」から「共に働く仕事仲間」になることは明らかです。そのためにも、まずは、使いこなしている人の講義を受けてみる…などは、決して無駄にはならなさそうです。

⒉ お金の知識で自分を守る

二つ目に予測されるトレンドは、お金のリテラシーです。1月から新たな少額投資非課税制度、いわゆる新NISAが始まったのを筆頭に、2024年もお金にまつわるイベントが目白押しです。

まず、新NISAは非課税で投資できる総額が1800万円に拡充され、資産形成への関心を一気に高めています。楽天グループの楽天証券が、2024年に入ってからの新規口座開設数が前年の3倍程度に伸びていることを明らかにしているとおり、資産形成を考える人が一気に増える年となりそうです。

これは「老後資金は公的年金をアテにはできない。自分でどうにかするしかない」という危機感の表れでもあります。「お金の知識を身につけて、自分の人生のリスク管理は自分でやる」というトレンドは、ますます強くなる予感があります。

Schooでも12月に「新NISAで広がるお金の選択」を開講しています。生放送当日の受講のみならず、アーカイブでも毎日視聴されている人気コンテンツとなっています。

今年は1万円札が福沢諭吉から渋沢栄一に変わるなど、日本円に新たな紙幣が発行されます。加えて、春から夏にかけて物価上昇対策として、所得税減税及び給付金の支給の実施、社会保険の適用拡大(10月)が待ち受けています。そんな中、自分の生活設計と制度とを見比べつつ、どう行動するかを決める「お金のリテラシー」は、社会人の必須スキルとなりそうです。

また、2024年は、台湾総統選に始まり、アメリカ大統領選挙や韓国、インドでも総選挙が行われるなど世界的な選挙の年。さらには、昨年から続くウクライナ戦争、パレスチナとイスラエル紛争と、世界情勢が目まぐるしく動いています。

世界情勢、国内政治の先行きともに、混沌とした時代。今後の生活防衛も資産形成も、まずは正しい知識を身につけることは、「自分の身は自分で守る」という自衛意識とも言えそうです。

⒊ 転職「希望者」増とキャリア設計

3つ目に見込まれるのが、キャリア形成スキルです。総務省の労働力調査で、2022年の「転職希望者数」は過去最高の968万人。1000万人に迫る勢いを見せています。“終身雇用崩壊”はよく聞かれるようになったものの、実際のところ転職者数は近年、年間300万人超から大きくは変わっていません。しかしながら、転職を「希望している人」は、実際の転職者数より、遥かに多いのは事実です。

終身雇用制度下では「異動も転勤もカイシャの辞令一つ」という働き方が当たり前でしたが、今や企業も「社員のキャリア自律」を盛んに掲げる時代。働き手も会社にキャリアを依存せずに「自分の人生設計、キャリア設計を自分で考える」という人が確実に増えていくでしょう。

スクーでも1月に実施の「キャリアの棚卸し」の授業は、通常の受講者平均を大きく上回り、突出した人気を博しました。

23年には国が「キャリアアップ支援事業」として、キャリア相談、リスキリング、転職を支援するサービスの利用で、最大56万円の支援を受けられる制度も開始。リスキリングとキャリア支援を組み合わせたサービスの登場も増えています。

終身雇用制度や、比較的厳しい解雇規制もあって、日本人は「キャリアの相談や話をしない」とも言われてきました。ですが、こうした「雇用流動社会」の変化や、即戦力の中途採用を増やす流れにある「企業のジョブ型導入」は、働き手の意識にも変化を起こしつつあります

キャリアの棚卸し、どんなスキルポートフォリオを作っていくかのキャリア設計など、定期的に自分自身の仕事と人生を見直す「キャリア構築スキル」は、今年、注目が高まりそうです。

■AIと仕事をする時に問われる力

ちなみに、上記とは別に、個人的に注目するのが「語学」と「リベラルアーツ」です。

日経リスキリングが企画した、学習サービスを提供する企業同士の座談会で、他社のサービス責任者のみなさんと話す機会が、2023年末にありました。

そこで、各社サービス上の検索ワードなどから「ニーズの高まりが確認される」と一致したのは、前述の生成AIに加えて、実は英語でした。翻訳ソフトも精度が上がり、ビジネス文書の作成や会議の同時通訳など、むしろ英語が話せなくても済まされそうな環境なのに、なぜでしょうか。

ここには、テクノロジーの進化と「賃金が安い日本」という2つの側面から、海外との取引や仕事が増える、あるいは「増やす必要がある」という心理がありそうです。

実際、とある学習サービスで英語を学んでいる方の筆頭はエンジニア。「海外の仕事が確実に増えている層」とのことでした。仕事相手ともなれば、翻訳アプリの活用は前提に、円滑なコミュニケーションが必要となるのは自明ですね。

個人的には「日本語以外による情報収集」が日常的にできているかどうか。これが今後、ビジネスや仕事の感度に大きな影響を与えると考えます。

例えば、ChatGPTも然りですが、AIに象徴されるテクノロジーの最先端分野は、日本外で動いています。それゆえ、日本語の情報に比べ、英語の情報の量や広さ、深さが大きいことは言うまでもありません。また、相次ぐ戦争もとより総選挙年でもあることから、地政学的リスクも高まる中、日本以外の国の立場や見方に触れることも重要です。

テクノロジーの進化により、海外のビジネスや紛争がより身近になる現代。翻訳ソフトの利活用もしながら、日本語以外の言語に触れていることは、今後ますます重要になるでしょう。

なお、ビッグトレンドとして疑いようのない生成AIの実践活用には、デジタル知識と併せて「教養分野」が問われるだろうというのも感じます。歴史的な背景や、美術や古典の知識、テクノロジー、理系分野の素養など、いわゆるリベラルアーツと言われる、基礎体力となる知力の分野です。

生産性がすこぶる高く勉強熱心な生成AIという「同僚」を迎える時代。教養分野をベースにした、視野が広く、かつ視座の高いコミュニケーションが、仕事の質を高めるだろうことは、想像に難くないからです。

テクノロジーの進化、時代の変化を踏まえながら、より社会人の学びが根本的、本質的なものに向かうことは、必然のようにも思います。

学び続けることが「すぐには役立たなくても、中長期に人生を豊かにさせてくれる力」になることを、今年も信じていたいと思います。


■株式会社Schoo

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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